GMが2020年からシボレー、キャデラック、GMC、ビュイックの全ブランドで新型EVを発表【新車】

■新型バッテリー「アルティウム」を搭載した次世代「グローバルEVプラットフォーム」を発表

ゼネラルモーターズ(GM)は、新型バッテリー「アルティウム」を搭載した、次世代の「グローバルEVプラットフォーム」を発表しました。他メーカーと同様に、中長期の将来を見据えてEV事業を加速するとしています。

2020年3月4日、GMは、ディーラー、投資家やアナリスト、メディア関係者、政策担当者、従業員を前に、EV事業を加速するとアナウンスしました。

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GMが発表した新型バッテリー「アルティウム」を搭載した次世代「グローバルEVプラットフォーム」

この戦略の核となるのは、モジュラー駆動システムと独自に開発したバッテリー「アルティウム(Ultium)」を搭載し、高い柔軟性を備えた、第3世代のグローバルEVプラットフォームです。これにより、手頃な交通手段、あるいはラグジュアリーなドライブ体験、作業用トラック、高性能マシンなど顧客の求めるものは、ほぼすべてに対応することが可能になるとしています。

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Mの会長兼CEOメアリー・バーラ氏

■「アルティウム」のバッテリー容量は50〜200kWhで、航続距離はフル充電で最大400マイル以上

GMの新型バッテリー「アルティウム」は、大容量のパウチ型セルをバッテリーパック内で垂直にも水平にも積み重ねることができる画期的な方式が採用されています。これにより、各車両のデザインに応じてバッテリーの蓄電容量やレイアウトを最適化することが可能だそう。

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GMの新型バッテリー「アルティウム」を搭載した次世代「グローバルEVプラットフォーム」

「アルティウム」のバッテリー容量は50〜200kWhで、航続距離はフル充電で最大400マイル以上、0〜60mph加速は3秒以内と推定できるそうです。自社開発によるモーターは、前輪駆動(FWD)、後輪駆動(RWD)、全輪駆動(AWD)、パフォーマンスAWDに対応。「アルティウム」バッテリー駆動のEVは、レベル2の直流(DC)急速充電に対応して設計されています。

ほとんどの車両が、400Vのバッテリーパックで最大出力200kWの急速充電機能を備え、ピックアップトラック向けプラットフォームは、800Vのバッテリーパックで350kWの急速充電機能が備えられています。

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新型バッテリー「アルティウム」を搭載した、GMの次世代「グローバルEVプラットフォーム」

EV開発におけるGMの柔軟性の高いモジュール式手法は、大きなスケールメリットが見込まれ、新たな収益機会を生み出します。まず、継続的なバッテリーコストの削減が期待されます。GMとLG化学との合弁事業により、バッテリーセルのコストを1kWhあたり100ドル以下に抑えることが見込まれます。セルには、独自開発の低コバルト含有化学素材が使われていて、引き続き技術面および製造面での改良を重ねることでさらなるコスト削減も可能だそう。

さらに、GMの新型グローバルプラットフォームは、デザインやパフォーマンス、パッケージングや航続距離、価格など、あらゆる面で優れた特性を備え、ピックアップトラック、SUV、クロスオーバー、乗用車、商用車など幅広い車種を開発するのに十分な柔軟性を備えています。また、既存の生産設備を活用できるため、EV事業を拡大する際の投資を抑えることができるとしています。

■新型「ボルトEV」の新バージョンが2020年後半にも登場

現行のEV車両も内燃機関を搭載した従来の車両ほど複雑ではありませんが、新型EV車両およびシステムは、それよりもさらにシンプルな構造で部品点数を最小限に抑えるよう設計されています。例えば、GMが市場に供給している内燃機関とパワートレインの組み合わせが550種類にも上るのに対し、当初は19種類のバッテリーと駆動ユニットの構成を計画。さらに、GMは、バッテリーセルの製造を垂直的に統合することで、自社車両だけでなく、他社にもその技術をライセンス供与することができるとしています。

「アルティウム」を搭載した次世代の「グローバルEVプラットフォーム」を発表したGM。EVの普及が拡大すると予想しているGMは、第三者機関による、米国におけるEV台数は2025年から2030年にかけて2倍以上になり、平均で年間およそ300万台に達すると予測を掲げています。

GMでは、人気の高い車両セグメントのEVの発売が増えることで充電ネットワークが拡大し、さらにユーザーの総所有コストが低下するにつれて販売台数が大幅に増加する可能性があると分析しています。GMの未来へ向けたこの第1世代のEVプログラムは、収益性が大いに見込まれ、初期のプログラムがさらなる成長への道を開くことになると予測。GMのテクノロジーは、同社が今後の5年間に予想される100万台を超えるグローバルセールスよりも、はるかに高い顧客需要に応えた拡張が可能になりるとしています。

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4月に公開されるラグジュアリーSUVの「キャデラック リリック」も同バッテリー、プラットフォームを搭載

具体的な商品ラインナップとして、GMは2020年からシボレー、キャデラック、GMC、ビュイックの全ブランドで、新型EVを発表すると予告しています。シボレーブランドの次の新型EVは「ボルトEV」の新バージョンで、2020年後半の発表を予定。

2021年夏には、2022年モデルの「ボルトEUV」がそれに続き発表される予定です。「ボルトEUV」は、キャデラック・ブランド以外では初めて、業界初の高速道路用ハンズフリー運転支援システム「スーパークルーズ」を搭載するモデルとなります。GMは来年中にもこの「スーパークルーズ」を10種類のモデルに導入し、2023年までには22モデルに増やす計画。

また、2020年1月、サンフランシスコで一般公開されたシェアリングサービス向けの電動式自動運転車「クルーズ・オリジン(Cruise Origin)」は、GMの第3世代EVプラットフォームと「アルティウム」バッテリーを採用した初の量産車になります。次に発表が予定されているのは、4月に公開されるラグジュアリーSUVの「キャデラック リリック(Lyriq)」で、詳細は追って発表されます。

さらに、2020年5月20日には、「アルティウム」バッテリーを搭載する「ハマーEV(GMC HUMMER EV)」の公開が予定されています。同モデルは、GMで最初の電気自動車専用組立工場であるデトロイト・ハムトラミック工場で、2021年秋に生産が開始される予定としています。

(塚田勝弘)

この記事の著者

塚田勝弘 近影

塚田勝弘

1997年3月 ステーションワゴン誌『アクティブビークル』、ミニバン専門誌『ミニバンFREX』の各編集部で編集に携わる。主にワゴン、ミニバン、SUVなどの新車記事を担当。2003年1月『ゲットナビ』編集部の乗り物記事担当。
車、カー用品、自転車などを担当。2005年4月独立し、フリーライター、エディターとして活動中。一般誌、自動車誌、WEB媒体などでミニバン、SUVの新車記事、ミニバンやSUVを使った「楽しみ方の提案」などの取材、執筆、編集を行っている。
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