絶大なるグリップ感! 本気で走る人のための二輪用スポーツラジアルタイヤの最高峰【ブリヂストンRS11】

■公道走行用スポーツタイヤのフラッグシップタイヤがモデルチェンジ

●バトラックス レーシング ストリート RS11試乗

RS11
公道で使えるハイグリップラジアルタイヤ「RS11」は、評判の高かった「RS10」をさらに進化。ハンドリング特性やコーナーリング時の安定性など総合的に高めている。

●新パターン&新コンパウンドを採用

ブリヂストンの公道用スポーツラジアルタイヤの最高峰モデルが間もなく発売となる。その名も「RS11」。言うまでもなく先代のハイグリップラジアル「RS10」の後継モデルで、すでにOEMとしてGSX-R1000などに装着されているタイヤの市販バージョンである。近年タイヤの進化が著しいが、果たしてどのように変わったのだろうか。

RS11の表面の溝のパターンは、サーキット用ハイグリップラジアルタイヤ「R11」をベースに、ドライグリップ性能の向上を追求したものだ。タイヤへの入力方向と同じ方向にメインの溝を配置することでトレッド剛性を高めると同時に、高いコーナーリンググリップとシャープなハンドリングを実現している。またショルダー溝の長さと配置を見直すことでバンク中の接地性を高めているという。

トレッドパターン
グリップ力が高いことを感じさせるパターン。サーキット用ハイグリップラジアルタイヤ「R11」をベースに路面との接地面積を稼ぐデザインになっている。

見ただけではわからない変更点のひとつは、ショルダー部に新開発のコンパウンドを採用したこと。従来のカーボンよりも粒子が細かい微粒径カーボンを採用することで路面への食い込み性がアップ。新規配合によりコンパウンド自体のグリップも高めている。またリヤタイヤには新しいベルト構造「V-MS・BELT」を採用し接地面積を広げている。

フロントタイヤにはもうひとつ変更点がある。それはクラウン(断面形状)半径の小径化だ。具体的にいうとRS10よりも尖ったR形状になり、ハンドリングが軽くなったという。これはかなり重要なこと。というのもクラウン形状はハンドリングに与える影響が大きく、タイヤのキャラクターを左右するからだ。

過去に別ブランドのタイヤで同じような変更事例があったが、同じバイクでありながら全く違う特性(その時はクイックから安定志向)に変わっていたのでとても驚いた経験がある。今回は軽くなる方向に変更されていると考えられるので、どう感じられるか興味深いポイントである。以上の内容を念頭に置いて試乗に挑んだ。

フロントタイヤ
断面形状が変わったフロントタイヤ。キャラクターを決定付ける重要な要素のひとつだけに、どのように違って感じられるか興味をそそられる。

●軽いハンドリングと明確なグリップ感

試乗は那須塩原にあるブリヂストンのテストコースで行った。アップダウンがあり路面なども公道に近いシチュエーションだ。用意されたヤマハYZF-R1にはRS10とRS11が装着され、順番に乗って比較するという流れ。クローズドコースとはいえ一般公道に近く、季節がら路面温度も低い。ハイグリップタイヤを装着したリッタースーパースポーツでは慎重にならざるを得ない状況。しかも周回数が限られている。この試乗で自分のようなライダーにタイヤの違いがわかるのだろうか?

そんなことを気にしつつ、まずはRS10でスタート。最初の1周半ほどはタイヤを暖めるイメージで走り、その後ペースを上げて4周をクリア。素直にバンクしていきコーナーリング中も高いグリップ感が得られる。やはり良いタイヤだ。しかしRS11はこれ以上の性能だという。果たして感じ取れるのだろうか。

RS10のコーナリング
タイヤが暖まるにつれ少しずつバンクを増やしていく。限られた周回数ではあったが、素直なハンドリングを実感できた。(RS10)
RS10の加速
トラクションも掴みやすく、車体が起き上がると同時に不安なくアクセルを大きく開けることができる。(RS10)

結論から言うと、それは杞憂だった。走り出してすぐに感じたのはハンドリングの軽さ。といってもライダーが思っている以上に倒れていったり、不安定な感じはしない。動き出しが軽く荷重移動に対するレスポンスがよい印象だ。しかも倒れ込みの過程ではRS10よりも明確にグリップ感が伝わってくるではないか。RS10はバンクするに従いフロントの接地面が少し細くなるような感じだったが、RS11は直進時と変わらないグリップ感がずっと続いていく。

それは両者を比較したからこそわかったこと。またアクセルを開けて後輪にトラクションをかけても、自分レベルの走りでは挙動に乱れはまったく感じられない。絶大なるグリップ感。それが冬に近い気温でも比較的早く実感できる。ツーリングタイヤほどではないにしろ、ハイグリップラジアルとしては暖まりが早い方であろう。

RS11の倒し込み
バンクスピードが早い。といってもライダーが思っている以上に切れ込むことはなく、荷重移動に対して遅れずについてくる印象だ。(RS11)
RS11のコーナリング
車体が寝ているときの安定感も向上。バンクさせていくときもフロントからしっかりと接地感が伝わってくるので、気持ちの余裕も増えた感じだ。(RS11)
RS11の加速
アクセルを開けるポイントが早まり、開度も増えたように感じる。よりスポーツライディングに集中できるタイヤに進化していると感じた。(RS11)

●もっと速く、楽しく走りたい人のために

グリップ感の良さに安心して徐々にペースが上がっていく。すると初めてのコースだったこともあってあるコーナーを読み誤り、少しオーバースピード気味に進入してしまった。しかしそこで軽くブレーキを引きずるようにかけてラインを修正することが不安なく、ごく自然にできたのだ。ツーリング先の知らない峠道でRを見誤りヒヤッとした覚えがある人もいるのではないだろうか。そんなとき(もちろん無いに越したことはないのだけれど)にコントロールできる余地が残されているのは嬉しいこと。そんなところでも進化を感じた。

RS11のコーナリング
コーナーリング中にラインを変えるという難易度が高めの動きもしやすくなった。バンク中のグリップ感がハッキリと伝わってくるため、微妙な速度調整をするときも不安が少ない。(RS11)

グリップ力が高いだけにサーキット走行会でも高いポテンシャルを発揮し、走りを十二分に堪能させてくれること間違いない。RS11はスーパースポーツで「走る楽しみ」をさらに深めてくれる新しいハイグリップラジアルタイヤだと言える。

●タイヤサイズ
(フロント用)
120/70ZR17M/C(58W)25,080円
(リヤ用)
190/55ZR17M/C(75W)38,720円
200/55ZR17M/C(78W)41,030円

●発売時期
2020年3月16日

(文/横田和彦、写真/ブリヂストン)