シンプルを極めたボディに合理性と美しさを詰めたフレンチコンパクト「シトロエン AX」【ネオ・クラシックカー・グッドデザイン太鼓判:輸入車編】

●名実ともに「フレンチコンパクト」に仕上がったAX

80〜90年代輸入車のグッドデザインを振り返る本シリーズ。第10回は、合理性を極めたボディに、独自のスパイスを振りかけたフレンチコンパクトに太鼓判です。

プジョーとの提携を機に大きな方向転換を試み、一定の成功を収めたBX。同じくPSAグループとして、1986年、激戦の欧州のスーパーミニ市場に送り込まれたのがシトロエンAXです。

AX・メイン
シンプルなボディは広い居住空間と高い空力性能を持つ

一見、中庸なハッチバックスタイルに思えるボディは、最小限に抑えられたノーズの長さと、ウーノなどライバルを凌ぐ居住性を実現したビッグキャビンが特徴。わずか3495mmの全長に2280mmのホイールベースが生かされています。

その合理的なボディは極めてシンプル。グラスエリアの広さは細いピラーによって一層強調され、低めのウエストラインとの組み合わせが優れたバランスと落ち着き感をもたらします。

シトロエンとしては決してラディカルとは言えないボディですが、徹底されたフラッシュサーフェスはCD値0.31という高い空力性能を達成。そうした機能性の高さがシトロエンらしさを補完しています。

AX・リア
スポイラー一体型のリアハッチにはシンプルな縦型ランプが備わる

どこかBXにも似たフロントフェイスは大きなヘッドランプが特徴で、薄くまとめられたグリルと片側に寄せられたエンブレムが個性を発揮。スポイラー一体型のリアパネルもまた、縦型ランプとともに独自のリアビューを作り上げます。

インテリアは、操作系を集約させたインパネがドイツ的な合理性を感じさせますが、一方、独特の形状のスポークを持ったステアリングや、大胆な柄のテキスタイルを使ったシートがフランス車の面目躍如といったところ。

AX・インテリア
ドイツ的な合理性を感じさせつつ、フランス車としてのセンスの高さも感じるインテリア

外部デザインとしたBXに対し、AXはカール・オルセン率いる社内デザインチームの手に委ねられました。シトロエンとして革新性やモダンさが求められる一方、より広い層に受け入れられ、かつ重量や空力といった条件を満たすプロジェクトは相当にハードなものだったといいます。

一見、ハッチバックの王道に見えながら、優れたパッケージングや磨き込まれた面、センスの良いディテールによって、名実ともに「フレンチコンパクト」に仕上がっているところにAXの魅力があるようです。

●主要諸元 シトロエン AX 14TRS (5MT)
全長3495mm×全幅1555mm×全高1355mm
車両重量 750kg
ホイールベース 2280mm
エンジン 1360cc 直列4気筒SOHC
出力 67ps/5600rpm 11.3kg-m/3400rpm

(すぎもと たかよし)

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すぎもと たかよし

東京都下の某大学に勤務する「サラリーマン自動車ライター」。大学では美術科で日本画を専攻、車も最初から興味を持ったのは中身よりもとにかくデザイン。自動車メディアではデザインの記事が少ない、じゃあ自分で書いてしまおうと、いつの間にかライターに。
現役サラリーマンとして、ユーザー目線のニュートラルな視点が身上。「デザインは好き嫌いの前に質の問題がある」がモットー。空いた時間は社会人バンドでドラムを叩き、そして美味しい珈琲を探して旅に。愛車は真っ赤ないすゞFFジェミニ・イルムシャー。
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