いまさらホンダのセダンについてレポートしても、誰も読んでくれないだろうと思いつつも、やっぱりレポートすることにしよう。なんでもアリのネット時代でもホンダの大型セダン・レジェンドとコンパクトセダン・グレイスの試乗記はほとんどない。
作ったメーカーのホンダも見捨てているモデル(清水和夫原文ママ/編集部注)なので、可哀想だ。これじゃ売れるわけないが、実はこの2台はとんでもなく魅力的なのだ。clicccarにホンダの広告料は入っていない(そうでもないんですよ清水さん/編集部注)ので、忖度ナシでレポートする。
ということで、まずはレジェンドから。
■レジェンドはまさに4ドア版のGTカー! ライバルはポルシェ・パナメーラ
●運転したいラグジュアリーセダン
StartyourEngines(SYE)のダイナミックセイフティテスト(DST)でも好成績を収めたホンダ・レジェンドはどんなセダンなのか。東京モーターショー2017でフェイスリストされて隅っこに展示されていたものの、なぜか存在感は薄い。
しかし、V6自然吸気とモーター内蔵のツインクラッチ(DCT)は小気味よくシフトが決まり、走る楽しさを存分に味わえるのだ。その実力をオープンロードで試したくて、2018年の春に約2000kmに及ぶロングドライブに連れ出したことがあった。
ところでレジェンドはアメリカではホンダのプレミアムブランド「アキュラ」で市販されている。レクサスほどの知名度がないので、「ホンダブランドで良いのでは」と言いたくなるが、これは禁句らしい。しかし、ホンダの社長さんが乗る運転手付きのクルマとして利用されるホンダの紛れもないフラッグモデルなのだ。
そのコアとなる技術は新型NSXと共通するモーターベクタリングによるSHAWD。レジェンドの場合はFF車ベースなので、リヤに左右独立のモーターでベクタリングを行う。
モーター四駆でありながら、しかもリヤアクスルで旋回性能を高める武器を搭載する。つまり、社長さんが乗るラグジュアリーセダンというよりも、4ドアのGTカーなのである。ライバルはポルシェ・パナメーラ辺りなのだが、ホンダマンはそのイメージを持っていない。
このように技術は独創的でユニークだが、日本ではセダンというクルマが売れないから目立たない。トヨタはレクサスやクラウンという法人需要に支えられているが、パーソナルカーを提供することが社是となっているホンダはビッグセダンで苦戦している。レジェンドのひとつ下のモデルであるアコードすら、売れていない。
その開き直りで思いきったチャレンジが出来たのは興味深いことだ。レジェンドはある意味、街の裏通りにあるスナックのように知られていない。だが、ひょこっとそのスナックに入ってみると、お酒はうまいし、セクシーなお姉サマもいるし、楽しい時間が過ごせるのだ。
ロングドライブをした時のモデルは真紅のボディカラーと白の内装。このカラーコーディネイトはホンダの女性デザイナーのアイディアだった。このセクシーなレジェンドで一路、津軽半島を目指したのだ。
高速走行はひたすら退屈だ。V6自然吸気と7速ツインクラッチ(DCT)をパドルシフトで遊びながら走ると楽しいが、クルーズはつまらない。こんなときこそ、自動運転機能が欲しいと思った。
津軽半島の先端にある龍伯ラインは日本でもベスト3以内に入るワインディングだ。ここで走りを楽しむと、龍飛岬についた。ここは石川さゆりの「津軽半島冬景色」という演歌で有名なところだが、実は青函トンネルの本州側の工事の拠点になっていた。落盤事故で亡くなった方の慰霊碑があるが、日本の土木工事の水準の高さに驚いた。
津軽半島の次に立ち寄ったのは「ランプの宿」と呼ばれる青荷温泉。ここは電気もWi-Fiもない昔ながらの湯場だ。3モーターのレジェンドとは対照的に、今夜は電気のない世界で一晩過ごす。
だが、秘密兵器として持ち込んだのはホンダ製リチウムイオンバッテリー「E500」だ。E500は携帯式の補助バッテリーだが、i-MMDハイブリッド車につないでおくと、走行中に充電できる。だが、レジェンドのハイブリッドでは充電できないことが分かった(汗)。なんで??と思ったが、レジェンドのハイブリッドは燃費のために存在するのではないので、給電なんて考えていなかったみたいだ。
ハイブリッドは環境のためではなく、走る楽しさのためにも存在できることが分かった。考えてみれば、F1はずっと前からハイブリッド技術を使っていたし、ル・マン24時間で活躍するポルシェやトヨタのLMP1もハイブリッドなのだ。
セダンという地味なカテゴリーに閉じ込められているレジェンドだが、その走りは紛れもないGTカーなのだった。
(文:清水 和夫/画像:HONDA/動画:StartYourEnginesX/アシスト:永光 やすの)
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