【自動車用語辞典:冷却系「ラジエター」】エンジンの発熱で温まった水を走行風で冷却する仕組み

■高出力化には冷却性向上が欠かせない

●冷却水は加圧して沸点を上げ冷却効果を高めている

エンジンの発熱の一部を受熱した冷却水を、走行風で冷却するのが熱交換器ラジエターの役目です。走行風を受けやすいようにフロントグリルのすぐ後ろに設置され、冷却水の熱を放熱します。

エンジンの冷却性能を決定づけるラジエターの構造や性能について、解説していきます。

●ラジエターの構造と重要な役目

シリンダー内の燃焼による発熱で高温になった冷却水は、ラジエターに送られて冷やされます。冷えた冷却水は、再びエンジンに戻され、エンジンとラジエター間を循環します。このエンジンとラジエター間の循環によって、冷却水は適正な温度に維持されます。

走行風が十分に得られない低速やアイドル時などで冷却性能が不足する場合は、ラジエターの後方に冷却ファンを装備します。

ラジエターには、プレートフィン型とコルゲートフィン型がありますが、クルマでは小型軽量しやすいコルゲートフィン型が主流です。

アッパータンクとロアタンクを、数多くのウォーターチューブ(水管)で繋ぎ、チューブとチューブの間に波板状のフィン(コルゲートフィン)を設けています。また、フィン自体にルーバーを設けて放熱性能の向上を図っています。

冷却水の流し方には、上から下に流すダウンフロー型と水平方向に流すクロスフロー型があります。日本ではダウンフロー型が一般的ですが、放熱性能に優れるクロスフロー型が高出力車を中心に増えています。材質としては、軽量なアルミ合金製が主流となっています。

エンジンの冷却系システム

ラジエターの構造
ラジエターの構造にはコルゲートフィン型とプレートフィン型があるが、自動車では前者が主流

●ラジエターキャップによる圧力調整

ラジエターは、内部の圧力が約1~2kg/cm2かかるようにした加圧密閉式です。これは、圧がかかった分だけ沸点が高くなり、沸騰し難い分外気温との差が大きくなって冷却効果が大きくなるからです。

冷却水は、走行とともに温度が上昇して、体積と圧力も増大します。そのままだとラジエターの破損にもつながるので、圧力が規定値以上になると上部に設置したラジエターキャップで余分な冷却水を逃がして圧力を保ちます。

一方で、クルマが停止して水温が下がるとラジエターの圧力も下がるので、今度は逆にキャップを通してリザーバーの水が引き戻されます。

ラジエターキャップの構造
ラジエターキャップの構造

●冷却ファンの必要性

冷却ファンは、ラジエターの直後に設置します。走行風による冷却が期待できない低速やアイドル時また外気が高温の場合に、ファンが回転してラジエターの熱を吸引して後方に拡散します。

ウォーターポンプと同軸にファンを装着したクランクシャフト駆動方式と、モーター電動ファンがあります。最近は、電子制御できる電動ファンが主流です。

そもそも横置きのFF車では、エンジン駆動の冷却ファンはラジエター直後に設置できません。エンジン駆動の冷却ファンは、FRのSUVなどの一部で採用されています。

●ファンクラッチ

エンジン駆動の冷却ファンには、駆動損失を低減するために必要なときだけ駆動するファンクラッチ機構が付いています。ファンクラッチは、内部に充填されたオイルが熱によって膨張することで、クラッチプレートが断続する仕組みです。


半世紀も前の話ですが、低速でトロトロと登坂していると冷却性能不足によって、オーバーヒートすることがよくあったらしいです。

エンジンの出力が上がれば上がるほど、その分冷却性能も向上させる必要があり、高出力化とともに冷却性能も進化したと言えます。

(Mr.ソラン)

この記事の著者

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Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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