レクサスやセンチュリーはまるで写真集! ディーラーでもらえるカタログの原価はいくら?

新車の購入検討の際に、必ずといっていいほど手にするのがカタログですね。メーカーや車種によって趣向が異なり、ペラペラのものから、質感の高いものまで様々です。今回は、クルマごとのカタログの違いに注目して、元自動車ディーラー営業マンが、クルマのカタログについて解説していきます。

■カタログは無料配布が当たり前?

カーディーラーに行って、自分の購入検討している車種のカタログをもらいに行くのは当たり前のことで、そのカタログは無料でもらえます。「カタログ1冊いくら?」と聞く人はほとんどいません。カタログはディーラーに行けば、当たり前にもらえるものとなっていますが、ディーラー側にはカタログのコストというものがあります。

カタログのほとんどは、ディーラーはメーカーに発注をかけて入手します。大体、15冊から20冊程度が一束になっており、営業に必須のアイテムとなるカタログを切らさないように注文します。1冊の単価は車種によって異なり、おおよそ50円程度から200円程度が仕入金額となり、仕入れたものをタダで配っているわけです。車販につながるので仕方のないコストですが、できるだけ意味のあるカタログ配布にしたいのがディーラーの本音です。

一般的なカタログ
一般的なカタログは、紙質、大きさを統一して、コストを下げています。

高級車のカタログになると、1冊あたり500円や1000円近いものまであり、おいそれと配れないのも現状です。カタログを良く見てみると、紙質や製本技術などが全く違い、お金のかかっているカタログはすぐにわかります。車両本体価格が高くなっていけばいくほど、カタログも豪華になっていく印象です。

普通のカタログの製本は、背表紙はなく真ん中を金具で留めてあるだけの製本ですが、品質の高いカタログは、背表紙ありの製本がされており、開きやすく強い紙を使っているのが特徴です。

最近のクルマでカタログがオシャレだなと感じたのは、GRスープラです。普通のカタログだなと思いきや、カタログの表紙に浮き文字が書いてあります。パッと見て何もないように見えながら、粋な文字列を入れるスープラのこだわりが垣間見えます。

GRスープラカタログ
セリカXXからGRスープラまでの系譜が、浮き文字になっています。

●レクサスの製本と印刷はおもてなしの心

筆者が営業スタッフをしていたレクサスのカタログは、トヨタから異動してきた際に衝撃的な品質でした。上質で発色のいい紙を使い、全体に表紙にするような厚めの紙が使われています。しっかりとした背表紙には、車名がしっかりと表示されており、製本作業に粗さは全く見られません。

レクサスカタログ
厚めの紙に背表紙と、レクサスのカタログには高級感があります。

多くのカタログがA4サイズを使うのに対して、レクサスやジャーマン3(メルセデスベンツ・BMW・アウディ)のカタログは、正方形に近く横に広いカタログにしているのが特徴的です。写真面を大きくとることができ、さらにレイアウトも様々に工夫ができる大きさになっています。

さらに、最近のレクサスのカタログは刷新され、より写真集に近い作り込みになりました。世界的に見ても高い品質のレクサスのカタログは、初めてのお客様へ、初めての「おもてなし」の心を表しているのでしょう。

LCカタログ
表紙から大きく変わったレクサスのカタログ、もはや写真集です。

●国内最高のカタログは「センチュリー」

30年近く、様々なクルマのカタログを見てきましたが、最も出来のいいカタログはトヨタ・センチュリーだと思います。トヨタディーラーでも、ほとんど置いていないセンチュリーのカタログは、安易に顧客に配らないカタログの一つです。

漆黒のケースと本カタログに、控えめに刻まれた金色の「Century」の文字、手触りは和紙のように柔らかで、見た目も触り心地も最高です。

センチュリーカタログ
ケース付きのカタログは、センチュリーの重厚さを表しています。

分厚い表紙をめくると、背表紙と1枚目は文様のみ、ハードカバーの書籍さながらの作りです。中の用紙はレクサス同様、質感の良い写真印画紙です。写真が非常にきれいで、枚数も多く、説明ばかりになっていない「見る」カタログです。先進装備が多くなり、読むカタログが増えた現代で、魅せるカタログを作り続けるトヨタとセンチュリーの特別感は、クルマもカタログも日本最高級なのです。

センチュリーカタログ02
写真が綺麗で文字が少ない、多くを語らない高級車です。

●まとめ

カタログを見るとクルマがわかります。隅々まで見たくなるカタログのクルマは、魅せるクルマが多くあります。カタログの中に込められたメーカーの思い、作り手の思いを感じ取るとともに、ユーザーを熱くさせてくれるカタログが増えてくれるのを願います。クルマに触れる入り口のカタログの品質を上げていくことが、国内のクルマの品質を上げることにもつながっていくでしょう。

(文:佐々木 亘)

この記事の著者

佐々木亘 近影

佐々木亘

大学卒業後、銀行員になるも3年で退職し、大好きだった車の世界へ足を踏み入れました。自動車ディーラー営業マンへ転職し、レクサス・セールスコンサルタントとして自動車販売の現場に7年間従事します。
現在はフリーライターとして独立し、金融業と自動車ディーラーでの経験を活かして活動中です。車にまつわる金融・保険・法規などの、小難しいテーマを噛み砕き、わかりやすい情報へと変換して発信することを心がけています。常にエンドユーザーの目線に立った、役立つ情報を届けていきたいと思います。
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