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今回、RAV4アドベンチャーとフォレスターアドバンスを試乗比較するにあたって、価格・ボディサイズ・車両重量・駆動方式などをほぼ同等のスペックで揃えている。
しかし乗ってみると、2台の走りの違いにはけっこう驚かされた。トヨタとスバル、それぞれの自動車メーカーが同じ4WD SUVに与えたキャラクターの差についても考察し、日産開発エンジニアであった筆者が詳細にレポートする。
●クルマを使うシーンによって異なる、RAV4とフォレスターのキャラクター
1.操縦安定性(直進性、コーナリング)の違いは?
RAV4は、ハンドルの操舵力が比較的軽めにセッティングされており、据え切りをする際でもハンドルをスルスルと軽く回すことができる。また、車速が上がっても中心付近の操舵力は軽めで変わらないが、切ったところからのハンドルの復元力がしっかりとしており、高速直進性が良い。軽い力で保舵していてもクルマがまっすぐに走ってくれるので、ドライバーは疲れにくく感じるであろう。
対するフォレスターは操舵力が重たい。据え切りをするときはそれなりに両手に力を入れる必要があるし、ステアリングを握る手の握力も必要とするため、RAV4よりも疲れやすい。
車速を上げるとハンドルの重さはやや軽くなるが、ハンドルの中心付近は平均的な4WD SUVよりも重たい。その分、高速直進性は良い。操舵力が重たいとハンドルからの反力を感じ取りやすいので、路面の情報を把握しやすい面はいい点だ。
操舵力については好みの問題であるため優劣は付けられないが、オンロードでの快適性を優先するならば、RAV4の方が良いといえる。
中低速でのコーナリングの軽快感はRAV4の方が一枚上だ。RAV4は軽めだが手ごたえのあるハンドル操作に対して自然とクルマの向きが変わる。235幅の19インチタイヤはグリップも十分高く、少ない操舵角でスイスイとワインディングも抜けていく。リアの左右駆動力配分をコントロールしている効果もあるのだろうが、後輪側でコントロールをされている印象は全くない。
対するフォレスターは、段付き曲がりの動きをする印象がある。ハンドル操作を止めた後にヨーが増えていく感覚があり、想定外の挙動となるためにハンドリングが落ち着かない。フォレスターに搭載されているアクティブトルクベクタリングがヨーをコントロールしているのかもしれないが、オンロードでは修正操舵に対して構えておく必要性を感じるシーンが稀にあった。
今回はアスファルトのドライ路面だったのでこのように感じたが、オフロードシーンでは、フォレスターの車両の向きの変えやすさは、むしろ魅力となるのかもしれない。そのあたりは別途レポートしたい。
自然なハンドリングをよしとするならば、RAV4の方がいいといえるだろう。
2.快適性(乗り心地、音振性能)の違いは?
RAV4とフォレスターには、乗り心地性能の違いはほぼない。2台ともにうねりを超えてもボディがフワフワすることもなく、突起乗り越しでもガツンとショックが来ることもなく、うまくいなしている。もちろん不快な振動もほぼなくボディが揺れてもスッと収まるので、どちらも快適だ。
ロードノイズもどちらも同じくらい静かだ。高速道路を走っていても、普通に会話ができるし、どこか遠くでノイズが出ている程度のレベルだ。
「低振動」「振動の収まりが早い」「低ロードノイズ」…こうした走りの質感の高さは、しっかりと車体を鍛えなければ達成することが難しい。併せてタイヤ選定とサスペンションのセッティングがうまくマッチングしているのだろう。
RAV4とフォレスター、どちらも4WD SUVの中では乗り心地性能はトップクラスだ。しいて言えば、19インチタイヤを装着したRAV4(235/55R19)と18インチ(225/55R18)のフォレスターだと、重たいばね下の振動をいなしているRAV4の方が、設計的にはハードルが高く、元開発エンジニアとしては「いい仕事している」と感じた。
3.加速性能、減速性能の違いは?
車重の重いSUVの場合、速く走る以上に大切なのがスタート時のトルク感だ。RAV4の2.0リットルガソリンエンジンは速いとは言えないが、ゼロ発進での力強さはそれなりに強い。しかも滑らかに加速をするため不満は一切ない。
対するフォレスターは、2.0リットルガソリンエンジン+モーター(e-BOXER)を搭載しており、力強い加速を期待していたのだが、想像の範囲内だった。不用意にトルクを出してホイルスピンをさせない、という意図があるかもしれないが、e-BOXERの加速性能への恩恵を直接感じることはできなかった。ただし、減速中にふとアイドルストップになっているなど、燃費へは少なからず貢献をしているのだろう。
4.実燃費の違いは?
約120kmの走行(50%高速道、50%一般道、途中アイドリング多数あり)に対し、RAV4アドベンチャーは12.0km/L、フォレスターアドバンスは9.0km/Lとなった。データは車載された燃費メーターを参照している。燃費達成率はRAV4:78%、フォレスター:64%であった。途中、アイドリングでの待機時間があったため、燃費達成率は低めとなった。
ちなみに、高速走行時は両車ともに下記のWLTC燃費数値を超えていたが、一般道ではRAV4よりもフォレスターのほうが燃費悪化の度合いが高かった。
※参考
RAV4アドベンチャー WLTCモード燃費:15.2km/L
フォレスターアドバンス WLTCモード燃費:14.0km/L
まとめ
内外装のデザイン、シートの座り心地、荷室の使い勝手、走り、燃費、総じてみるとそれぞれに長所・短所があり、面白い結果となった。
オーナーがクルマを使うシーンに応じて、適したクルマを選べばいいが「移動した先で次のアクティビティをする機会が多いSUV」であれば、疲れにくさが求められるだろう。そうなると筆者のおすすめは、「RAV4」だ。
(文:吉川賢一/写真:鈴木祐子)
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