より上質さを与えられたフラッグシップセダン&クーペ【レクサス LS&LC試乗】

●フラッグシップに相応しい上質さを追求したLS&LC

レクサスのフラッグシップセダンである「LS」そしてフラッグシップクーペである「LC」の2車種は、ともに2019年の秋に改良を受けています。今回、この2車に試乗する機会に恵まれました。

レクサスLS 前7-3 スタイリング
エクステリアのでは基本的な変更のないLS

まず、LSです。LSはとくに乗り心地関連がグッと向上しているのが特徴的です。LSはランフラットタイヤを使っていますが、今回そのランフラットタイヤのセッティング変更が行われました。

タイヤそのものの上下のたわみ、つまりバネ成分の最適化が図れたことで、クルマの動きにしっとり感が増しています。クルマの動きが決まる最終的な要素であるタイヤは、さまざまな領域に影響を及ぼしますが、とくに細かい振動の受け皿としてはタイヤが決め手となるもので、この部分を改善できたのはフラッグシップセダンであるLSにとっては非常に大きな出来事であると言えます。

レクサスLS リヤ7-3スタイリング
伸びやかなルーフラインを持つLS

また、従来4WD車にのみ使われていてきた伸圧独立オリフィス付きショックアブソーバーをFR車にも拡大しています。オリフィスとはショックアブソーバー内でオイルが行き来する小さな穴のことです。

ショックアブソーバーが伸びるとき、圧縮されるときそれぞれに独立したオリフィスを使うことで、ショックアブソーバーの反応がよくなり細かい段差などをより正確にダンピングしますので、乗り心地のよさがアップします。

さらに今回はAVSのロール制御なども変更しています。リヤサスペンションのメンバーマウントの減衰力特性も変更されています。

レクサスLS フロントシート
シート横スイッチでヘッドレスト調整ができるようになった
レクサスLS リヤシート
リヤエンターテインメントシステム装着車は足元空間が拡大された

LSの乗り味は全体としてしっかり感が出ていると同時に正確さが増している印象です。さまざまな制御が入って、挙動をコントロールしていますが、サスペンションのセッティングなどの基礎の基礎を修正すると、やはりクルマは変わります。

また今回は中低速時のモーターアシスト量を増やしたことで、普段使いのときのグッと前に出る感覚がアップしているのも特徴的で、日本のスピードレンジでの力強さを十分に感じ取ることができました。

レクサスLS インパネ
走行モードの切り替えなどはメーターカバー上部のロータリースイッチで行う
レクサスLS ハイブリッドユニット
モーターアシスト量の変更によって、中間加速が力強くなった

一方、フラッグシップクーペのLCも変更を受けています。LCはステアリングまわりの改良を受けています。

まずステアリングをボディにマウントするためのステアリングサポートをアルミダイキャスト製とすることで、しっかりとした剛性を持った取り付けを可能にしています。ステアリングシャフト中間に存在するインターミディエイトシャフトを小型軽量化、ステアリングギアのマウントブッシュの剛性向上も図られています。

結果として、ステアリングフィールはより正確でありながらスッキリとしたものとなりました。もともとがかなりしっかりしたものなので、その違いを感じるのは難しいレベルではありますが、コーナリング中にステアリングをわずかに左右に振った際のしっかり感などは感心するほどの正確さです。

レクサスLC 前7-3スタイリング
特別色のテレーンカーキマイカメタリックが採用されたLCの特別仕様車
レクサスLC 後ろ7-3スタイリング
ポリッシュ仕上げ+ブラック塗装の専用ホイールが装着される特別仕様車

また、試乗した特別仕様車のパティーナエレガンスにはAアニリンのシート地が使われています。このシート地、じつに座り心地がいいのですが、それだけでなくしっかりと身体をホールドしてくれるのです。おかげでクルマの動きがしっかりとわかるという利点があります。

身体にピッタリと接触するタイプのシートなので、夏場の暑さなどがきになりますが、ベンチレーション付きなのでその点の心配もありません。

レクサスLC シート
上質な雰囲気を持つシート地
レクサスLC インパネ
スポーティなクーペらしい適度なタイト感を備えるインパネまわり

(諸星陽一)

この記事の著者

諸星陽一 近影

諸星陽一

1963年東京生まれ。23歳で自動車雑誌の編集部員となるが、その後すぐにフリーランスに転身。29歳より7年間、自費で富士フレッシュマンレース(サバンナRX-7・FC3Sクラス)に参戦。
乗って、感じて、撮って、書くことを基本に自分の意見や理想も大事にするが、読者の立場も十分に考慮した評価を行うことをモットーとする。理想の車生活は、2柱リフトのあるガレージに、ロータス時代のスーパー7かサバンナRX-7(FC3S)とPHV、シティコミューター的EVの3台を持つことだが…。
続きを見る
閉じる