マフラーはサイド出し!? 救急車専用に改造されたトヨタ・ハイメディックの凄さを見て! 

街中でよく見かける救急車には、様々な車種が流用されていますが、救急車専用に作られているクルマをご存知でしょうか。トヨタ自動車の販売する「ハイメディック」は、高規格救急自動車として日本で初めて販売されたクルマです。今もなお、国内最大シェアを誇るハイメディックの凄さについて、元トヨタディーラー営業マンが解説していきます。

■単なる架装ではなく「救急車」を作っている

ハイメディックが世に出たのは、1992年のことです。それまで救急車は、市販のバンを架装して救急車として必要な装備を後から取り付ける方法で作られていました。高度な救命機器を搭載している救急車もあれば、最低限度の装備しか持たないものもあり、救急車の格差が存在します。

救急救命士法が1992年に施行されたのを受け、日本でも高規格救急車の普及が進みます。高規格救急自動車とは、多くの医療機器を積み込んでも救急救命士の活動を阻害しない空間が準備されており、無理にかがまずに自然な姿勢のまま救命処置が行える高性能な救急車の事を指します。

医療技術が進歩し、積み込む機材が多くなりすぎることから、患者を手当てする十分な空間が確保できない点や、重量のある医療機器を積み込んでも十分なエンジン出力を保ち、迅速に患者を搬送できる点などを、それまで作られていた救急車から大きく改善させるため専用設計となったのがハイメディックです。

●救急車革命を起こした初代と2代目

初代ハイメディックは100系ハイエーススーパーロングをベースに開発され、全長は5345mm、全幅は115mm拡幅され1810mm、全高は2490mmにもなる大きなクルマです。積み込む機材が多く、従来のハイエースのエンジンではパワー不足が懸念されたので、当時トヨタで最大級のパワーを誇る、初代セルシオに搭載されていたV型8気筒の4Lエンジンが搭載されます。

2代目は1997年に発表され、ベース車がグランビアに変更されます。この2代目には救急専用車としての、数多くのアイデア装備が搭載されます。

ハイメディック
救急車として入念に開発された2代目ハイメディック

まずは、排気口を横出しにし、患者の搬送時や救命活動への影響を最小限にしました。次に、バックドアとスライドドアへイージークローザーを装備します。搬送する患者への負担を小さくするために、ドアを静かに閉められるようにするためです。そして、2代目ハイメディックの最大の特徴は4WSを搭載した点になります。

全長5.6m、全幅1.8mを超える非常に大型のクルマになってしまったハイメディックは、人口増加と集中を伴う都市圏の道路事情にそぐわない大きさになってしまいました。このままでは狭い路地での取り回しが非常に悪いため、前輪の操舵と同時に、後輪にも切れ角を作れる4WSを装備し最小回転半径を小さくするとともに、旋回時の内輪差も小さくすることに成功します。

これらのハイスペックな装備が奢られた2代目ハイメディックは、現在では民間の患者搬送車として多くの需要があり、登場から20年が経過する現在でも、現役で活躍するクルマが多く見られます。

●現行の3代目は救命士目線のクルマ

現行ハイメディック
3代目は機能性をさらに高め、救命士の目線で大きな改良をしています。

2006年に改良を迎えて3代目となったハイメディックは、200系のハイエースにベース車両の座を戻す形になります。2代目のグランビア時代に採用されていた4WSの採用は、3代目への変更を機になくなりました。4WSの代わりに、前輪の切れ角アップを行い小回り性能を落とさないように工夫がされています。切れ角アップのため、標準仕様のタイヤフェンダーではタイヤのはみ出しが懸念されるため、フェンダーモールを装着しているのが特徴です。

スライドドアは両側に設定され、これにより患者室が広く設定できるようになりました。乗車人数も7人乗りから8人乗りに変更され、救命士の座るイスの高さも10cm高くなっています。より多くの医療機器と隊員の作業性の向上を図り、内装装備に拡充の進化を遂げた3代目ハイメディックです。

●まとめ

日本の救急車の第一線で活躍するハイメディックは、トヨタディーラーのトヨタ店専売車種となっています。中でも法人や官公庁を専門に扱う特販部という部署の専用販売車です。単なる改造車ではない、一から救急車を作るために考えられたクルマは、今後も救急の最前線で活躍していくでしょう。

(文:佐々木 亘)