■SUBARU「ツーリング」のルーツは日本初の乗用型4WDとして登場した二代目レオーネ
9月某日「スバルGTエクスペリエンス」というロングドライブへ参加しました。スバルはロングドライブ、つまりツーリングを大切にするブランドです。そのルーツは日本初の乗用型4WD、レオーネにあります。
1971年に初代モデルが登場したレオーネは、1979年にフルモデルチェンジをして2代目となります。この2代目に設定されたモデルがツーリングワゴンです。ツーリングワゴンというとレガシィを思い浮かべる方も多いでしょうが、それ以前のレオーネ時代からすでに使われていたネーミングなのです。当時のスバルでネーミングを担当した方はきっとステーションワゴンではなく、ツーリングワゴンにしたいという強い気持ちがあったのでしょう。
ステーションワゴンの“ステーション”とはまさに駅のことです。初期のステーションワゴンは列車で旅をしてきた人の荷物を荷室に積んで、旅人と荷物の両方を宿などまで届けるためのクルマでした。いわば、旅館やホテルの送迎車のような扱いを受けるのがステーションワゴンだったのです。当時のスバルの担当者はきっと「このクルマは送迎車ではない。ドア・トゥ・ドアで目的地まで走るクルマだ」と想ったに違いありません。そこでステーションワゴンという名は使わずに、旅行や遠乗りを意味するツーリングを冠し“ツーリングワゴン”にしたのだと私は理解します。フルモデルチェンジした3代目レオーネにもツーリングワゴンは設定されました。
1989年1月。スバルは長年多くのファンに支持されたレオーネに代わるモデルをデビューさせます。レオーネというスバルの歴史にとって欠かせないクルマを受け継ぐモデルには、“大いなる伝承物”という意味を持つレガシィという車名が付けられました。そしてもちろん、ツーリングワゴンという大事なモデルも伝承されました。同年9月、レガシィに新たなグレード“GT”が追加されます。GTはターボエンジンを搭載するモデルで、そのスポーツ性能にスポットライトが当てられましたが、じつはその真価はGT、つまりグランドツーリングで生かされるモデルでした。2代目レオーネで始まったツーリングという想いはレガシィになりグランドツーリングへと昇華します。
1989年にスタートしたレガシィ・ツーリングワゴンの歴史は、2014年にその幕を閉じ、レヴォーグへとバトンを渡します。レヴォーグはワゴン専用モデルとなり、ツーリングワゴンという名称は使われなくなりました。しかし、レヴォーグのカタログを見ると車名の前にワンフレーズ“GTツアラー”の文字がそえられているのです。そして、レヴォーグのグレード名は、STIの名が付くもの以外はすべてGTという名が冠されています。
レオーネから始まったツーリングのスピリットは、レガシィを経て、レヴォーグに引き継がれています。今回の試乗、レオーネはいませんが、初代レガシィ、4代目レガシィ、レヴォーグ2.0&1.5の4種のモデルに試乗しました。スバルのグランドツーリングに対する考えの深さを感じ取ることができた旅の様子をお伝えします。
(文・諸星陽一/写真・前田惠介)