●フロントのトレッドを拡げてアンダーステア傾向を抑えこむ
ホンダ・シビックタイプRに無限パーツを組み込んだモデルに試乗しました。
このモデルでおもしろかったのは、ショックアブソーバーなどは変更せず、ホイールの変更だけでセッティングを出している部分でした。
装着されていたホイールは20インチの鍛造の切削仕上げモデル「MDCF」です。このホイール、4本で10kgオーバーの軽量化が施されています。同じ20インチホイールですが、フロントは2.75kg/本の軽量化、リヤは3.1kg/本の軽量化が施されてます。ホイールサイズは8.5J×20で同一ですが、重さが違います。
その秘密はインセットにあります。フロント用のインセットは45mm、リヤ用のインセットは53mmとなります。つまり、フロント用は取り付け面が厚くなるので、その分重くなるというわけです。
だったら、フロントもリヤと同じインセットにすればさらに軽量化ができると思う人もいるでしょうが、フロントのインセットが小さいのにはわけがあります。
フロントはインセットを小さくして、トレッドを広げようというのが目的です。フロントトレッドを広げることで、フロントのグリップをアップしてアンダーステア傾向を抑え込もうというのが目的です。
実際に走らせてみると、ステアリングを切った瞬間からの動き出しもよく、コーナリング中にスロットルを開けていったときのアンダーステア傾向もよく抑えられています。なによりも、ショックアブソーバーやスプリングを変更することなくこのセッティングを出していますので、乗り心地は損なわれていません。
また試乗車にはクイックシフターも装着されていました。このクイックシフターはシフトストロークをマイナス10mm(6%)するだけでなく、シフトレバーの装着位置をドライバー側に14mmオフセットしています。私は左手が少し短いので、このように装着位置が近づくとかなり操作性が向上します。
また、ゴムブッシュを廃止して金属リングとしたほかリターンスプリングのレートを18%程度アップしたことで、シフトフィールの節度感がアップしています。メカニカル感が増していることで、気持ちよく、そして正確にシフトができました。
ステアリングはかなり太いグリップのものが採用されています。ただ、9時15分の位置はさほど太くもなくしっかりとつかむことができます。力強さと使いやすさを両立することができるステアリングであるとともに、正しい位置に手を置くことが基本となるのもいい点です。純正のエアバッグとスイッチ類を移植して取り付けるので、安全性や操作性の低下がないのもいい部分です。
ブレーキはパッドのみを変更。フロントは従来よりあるタイプ、リヤは新作でサーキットでのタイムアタックを中心に熱だれを抑える仕様としています。筑波2000を例にすれば、1ラップでアタック、次のラップでクーリングすれば、その次の1ラップは初期の性能を回復できる仕様となっています。
(文・諸星陽一/写真・長野達郎)