前衛的ボディを現代的なスタイルに変身させた個性派ハッチバック「シトロエン BX」 【ネオ・クラシックカー・グッドデザイン太鼓判:輸入車編】

●80年代の潮流を捉え、現代的なスタイルへと昇華させたシトロエン・BX

80~90年代の輸入車のグッドデザインを振り返る新シリーズ。第2回は、超個性的な前シリーズを現代的な解釈で再構築した、近未来的ハッチバックに太鼓判です。

個性的なGS/GSAやCXで70年代に独自の世界観を築き上げたシトロエンは、この間を埋めるミドル・クラスの開発を計画。プジョーとの合併に加え、同社として初めてデザインを社外に委託、1982年(日本発表は1984年)に登場したのがBXです。

基本的なシルエットは高い居住性を感じる5ドアハッチとしながら、直線基調に大きくシフトしたのは、これから始まる80年代の潮流を的確に捉えたもの。しかし、2655mmの長いホイールベースによるプロポーションは、それまでのシトロエンらしさをしっかり継承します。

大きなフロントランプも前世代を意識しつつ角型に移行。グリルレスとしたフロントのパネルは、ランプと微妙に角度をずらすことで立体的な表情を獲得、シンプルながら退屈な顔にならない工夫が施されています。

華奢なA、Bピラーはしかし広いキャビンを演出し、直線による表現がある種の先進感も感じさせます。また、別パーツのようなリアクオーターは意表を突いた表現ですが、特徴的なスリットをボンネットにも施すことでBXのデザインテーマに昇華。

バンパーの高さに合わせた細いサイドモールは、リアホイールのハーフスカートとともに前世代を巧妙に再現。また、ほぼ正方形のリアランプと直線で2分割されたリアパネルが新時代をしっかり表現しています。

一方、同様に直線基調のインテリアは、特徴的な1本スポークと複雑な形状のサテライトスイッチが近未来を演出。デジタル式の速度計類だけでなく、大きく2分割したダッシュパネルや、整然としたコンソールもまた次世代を感じさせます。

ベルトーネに委託されたスタイリングは、当時まだ同社に在籍していたマルチェロ・ガンディーニが担当。単に直線基調に変えたということでなく、その上で独自の個性を与えることに成功しています。

たとえばクオーターパネルのアクセントなどは、近年でも同様の「細工」が多く見られます。しかし、それが部分的な「思い付き」に止まらず、ボディ全体の造形テーマとなっている点は、いまこそ学ぶべき仕事と言えるかもしれません。

●主要諸元・シトロエンBX 16 TRS(5MT)
全長4230mm×全幅1660mm×全高1365mm
車両重量 980kg
ホイールベース 2655mm
エンジン 1578cc 直列4気筒OHC
出力 92ps/6000rpm 13.4kg-m/3500rpm

(すぎもと たかよし)

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すぎもと たかよし

東京都下の某大学に勤務する「サラリーマン自動車ライター」。大学では美術科で日本画を専攻、車も最初から興味を持ったのは中身よりもとにかくデザイン。自動車メディアではデザインの記事が少ない、じゃあ自分で書いてしまおうと、いつの間にかライターに。
現役サラリーマンとして、ユーザー目線のニュートラルな視点が身上。「デザインは好き嫌いの前に質の問題がある」がモットー。空いた時間は社会人バンドでドラムを叩き、そして美味しい珈琲を探して旅に。愛車は真っ赤ないすゞFFジェミニ・イルムシャー。
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