ST5クラスで4戦3勝! スーパー耐久でマツダ車が躍進する理由とは?【スーパー耐久2019】

●パワーはライバルに劣ってもトータルバランスと戦略で勝利を狙うマツダ勢

7月20日〜21日に大分県オートポリスで開催された「第4戦 TKU スーパー耐久レース in オートポリス」。

ST5クラスの予選4番手からスタートしたヒロマツデミオが見事に優勝を果たしました。

ピレリスーパー耐久シリーズ2019のこれまでのST-5クラスの優勝車を振り返ってみると、前戦の富士24時間では村上モータースMAZDAロードスター、そして開幕戦の鈴鹿ではDXLワコーズNOPROデミオSKY-Dとなり、これまでの4戦中3戦でマツダ車が優勝しています。

今回のオートポリス戦ではかなりの悪天候が予想されていました。スタート前のカウントダウンではほんのひとときだけ雨は上がりましたが、スタートラインで行われたカウントダウンの様子を見てみても、フィニッシュラインのオートバックスゲートには霧がかかっているのがお分かりいただけると思います。

レース終盤に差し掛かる4時間経過の15時30分までは小雨だった天候が急変し大雨と風、そして高低差のあるオートポリスのコースの標高の低い場所では濃霧となります。それまでトップを保っていた村上モータースMAZDAロードスターは、この天候の変化からコースアウトして5番手まで順位を落としてしまいます。そこでトップに立ったのは比較的雨に強いFF車のヒロマツデミオ。

ST-5クラスにはホンダフィットも出場しています。しかしFRのロードスターに加えて、FFデミオはガソリンとディーゼルで、マツダ勢の出場ラインナップの層はかなり厚い。ホンダフィットに比べればパワーで10馬力低いマツダのガソリン車ですが、車重の軽さを生かすドライビングと作戦でマツダ車は表彰台の一角を占めてきます。ディーゼル車に至ってはフィットに比べて25馬力もパワーが低いところを圧倒的な低燃費でピット回数を減らし2周差程度のタイム差をピットワークで縮めてきます。

今季優勝経験のあるマシンを俯瞰するだけでもこれだけ個性の強いマツダ車。それだけスポーツドライビングに適した車種が多いことが出場車両の多さにつながっているのです。

マツダ車はST-5クラスだけではありません。トヨタ86、スバルBRZばかりのST-4で孤軍奮闘するTC CORSE iRacing ROADSTERは2リッターのロードスターRF。今季初挑戦のマシンだけに思うような成績は出せてはいませんが、次戦以降は好成績が望めるのではないかと予想されます。

また重量の軽さと燃費で125馬力のパワー差を克服し、開幕戦以来4戦中3戦を表彰台登壇という快進撃を続けているのがST-2クラスのDXLアラゴスタNOPROアクセラSKY-D。

なにせライバルはランサーEvo.XとスバルWRX STIという300馬力オーバーマシン! そこに200馬力足らずのマシンで挑戦するのですから並大抵のことではありません。

今回はスタートの翌周にピットインしドライバーチェンジで3回の義務ピットインを消化、その後はロングラン作戦で安定したポジションをキープしていきます。

そのロングラン作戦を確固たるものとするために、予想される急激な天候変更にも耐えられるようにとフロントはスリックタイヤ、リアをレインタイヤという変則的なタイヤ装着をしてきました。

この変則的なタイヤ装着について、セカンドスティントを担当した大谷飛雄選手によると「普通のレコードラインで走れないのはつらかったけど雨の量が変化してもかなり耐えることができたので有効だったと思います」とのこと。

またライバルに比べて壊れる箇所の少ないシンプルな構造もあいまっての3位表彰台となりました。

アクセラやデミオ、ロードスターなどのマツダ車勢はライバルに比べてパワー面ではかなり劣りますが、それを補う長所が光るクルマばかり。マツダ自体は参加型モータースポーツに力を入れる方針のモータースポーツ活動を行っていてその最高峰に位置しているのがスーパー耐久とのこと。

そのスーパー耐久を光る個性と作戦で、まさに「人馬一体」で戦っているのが参戦しているマツダ勢ということになるのです。

今期のスーパー耐久も次戦のもてぎ、最終戦の岡山を残すのみとなります。現在ST-5クラスでは優勝経験のあるチームはすべてチャンピオンに手が届くポイント数を確保しています。果たしてマツダ勢からST-5クラスチャンピオンが出るのか? そしてST-2、ST-4クラスのマツダ勢はどこまでシリーズポイントを伸ばせるのか? 非常に楽しみなところです。

(写真・文:松永和浩)

この記事の著者

松永 和浩 近影

松永 和浩

1966年丙午生まれ。東京都出身。大学では教育学部なのに電機関連会社で電気工事の現場監督や電気自動車用充電インフラの開発などを担当する会社員から紆余曲折を経て、自動車メディアでライターやフォトグラファーとして活動することになって現在に至ります。
3年に2台のペースで中古車を買い替える中古車マニア。中古車をいかに安く手に入れ、手間をかけずに長く乗るかということばかり考えています。
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