目次
【頑固一徹・清水和夫、中身大変身の「メルセデス・ベンツG550」に乗る】
国際自動車評論家・清水和夫さんによる「頑固一徹 和」試乗レポートclicccar版・その2は「メルセデス・ベンツ G550」です。
40年ぶりのモデルチェンジを受け2018年6月6日に発表・発売された新型G550。全長で約300mm、全幅で約100mmも拡大されたボディに加え、従来のテイストを残しながらサスペンション形式やステアリング形式を変更し、ロングセラーの硬派なゲレンデヴァーゲンは生まれ変わりました。
人気モデルの宿命といえる変化はオールドファンから支持されるものなのか? その実力に清水和夫が迫ります。
※ディーゼルエンジン仕様の話が登場しますが、今回のG550試乗は「G350d」発表前のものです。
■軍用車がライフスタイルカーになって大人気!がゆえのMCは大反対を受けた!?
・新Gクラスはオンロードでもスイスイいけます!
Gクラスっていうのは、元々30年ほど前にNATOの軍用車として企画されたクルマ。「道無き道を走れるオフローダー」が、オンロードのライフスタイルカーになって圧倒的な人気を得るとは、作ったメルセデス張本人も予想もしていなかったと思います。
実は2005年くらいにこのGクラスを「フルモデルチェンジする!」って言ったら、世界中のG愛好家から「このデザインを変えないでくれ!」って大反対を受け、メルセデスは踏みとどまった…ということもありました。
従来のG、実はかなり使いにくかったところがあったんです。陸軍が使うような完全な軍用車でしたからね。ボクも今まで何度このクルマを買おうか!? と思ったことか…。
しかし、例えばステアリング。ラック&ピニオン式ではない「リサーキュレーティングボール(ボール・ナット式)」。これは手ごたえは良いんですけどロックtoロックが3.5回転!と、非常にスローなステアリングだったので、高速道路で急に誰か飛び出した時など急ハンドル切ってダブルレーンチェンジなんか出来ないだろうな…と思い、買うのは踏みとどまったんです。
メルセデスもそこはよく分かっていて、今回の大手術!
一番の大きな変更点はステアリングがラック&ピニオン式になったこと。ロックtoロックが2.7回転くらいとクイックになりました。従来のサスペンションでステアリングをクイックにすると重心が高いので危なかったんですけど、フロントサスペンションを大改造し、重心点はそんなに下げられないですけどロールセンターを上手く工夫することによって、クイックでダイレクトなステアリングでも車体そのものが非常に安定するように工夫されたのです。
フロントサスペンションと、ラック&ピニオン式のギヤボックスでよりダイレクトになったギヤ比、このふたつの変更によりこの新しいGは抜群にオンロードで乗りやすくなりました。
Gの伝統である「ラダーフレーム」を残しながらも、使い勝手のいいモダンなシャシー性能を作り上げました。まぁ全部モノコックにしちゃうのは簡単なんですけど、それをやらなかったところにGの「ゲレンデ」ブランドとしての価値があるのかな、という気がしますね。
■エンジンはホットなV8ツインターボ。それよりも直6ディーゼル版が待ち遠しい!
実はすでにメルセデスSクラスに搭載して人気の高い直6ディーゼルがこのモデルに搭載されることが発表されています。道無き道を走れる駆動力性能、直6ディーゼル、Gの4WDシステム、4マティックの組み合わせは恐るべき最強の走破性なんじゃないかなという気がしますね。
今回の試乗車は4L・V8、Vバンクの中にタービンが入るホットV。ディーゼルよりも1000rpmくらい高いところが常用になると思うんですけど。9速トルコンATとV8の組み合わせはトルクは十分あるし、ガソリンエンジンなので回転を上げればパワーも上がり、ディーゼルよりコチラのほうが気持ちがいいなって感じになりますね。
それにしても、旧型に比べて乗り心地はよくなったよね。ただ、フロントサスペンションが変わったので、旧型のようなみるからに「道無き道を走るクロスカントリーカー」だなって感じはしないです。
古き良きものは残し、新しい技術で最小限にモダンナイズしていく…、そんなクルマがGクラスなのではないでしょうか。私は今後リリースされる直6ディーゼルにウルトラ期待しています!
【頑固一徹 総合評価】(5段階評価)
★★★★
【頑固一徹 評価ポイント】(5段階評価)
パワートレイン:和和和和 4点
シャシー性能:和和和和 4点
インターフェース:和和和和 4点
(試乗:清水 和夫/アシスト:永光 やすの・取材協力/メルセデス・ベンツ日本)
【SPECIFICATIONS】
車名:メルセデス・ベンツ G550
ボディサイズ:全長4660mm×全幅1930mm×全高1975mm
ホイールベース:2890mm
車両重量:2450kg
エンジン:V型8気筒DOHCツインターボ
エンジン排気量:3982cc
最高出力:310kW(422ps)/5250~5500rpm
最大トルク:610Nm(62.2kgm)/2200~4750rpm
トランスミッション:電子制御9速AT
駆動方式:四輪駆動(4WD)
サスペンション:F ダブルウィッシュボーン/R 5リンク
ブレーキ:F ベンチレーテッドディスク/R ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:F 275/55R19/R 275/55R19
車両本体価格(税込):15,930,000円
【清水 和夫 プロフィール】
1954年生まれ東京出身/武蔵工業大学電子通信工学科卒業
1972年のラリーデビュー以来、国内外の耐久レースに参加する一方、国際自動車ジャーナリストとして活動。自動車の運動理論・安全技術・環境技術などを中心に多方面のメディアで執筆し、TV番組のコメンテーターやシンポジウムのモデレーターとして多数の出演経験を持つ。
【頑固一徹試乗とは?】
国際モータージャーナリスト、清水和夫が斬る試乗インプレッション『頑固一徹テスト』。頑固一徹・清水和夫が独自の目線でチョイスした新型モデルを、パワートレイン、シャシー性能、ヒューマンマシンインターフェイス(HMI)の3分野で評価、採点し、その合計点によって5段階で評定します。
■頑固一徹 総合評価指数
1〜3点→★(評価1)
4〜6 点→★★(評価2)
7〜9点→★★★(評価3)
10〜12点→★★★★(評価4)
13〜15点→★★★★★(評価5)
■頑固一徹テスト 試乗インプレッション
評価軸(3項目)&評価ポイント
パワートレイン 5段階評価(1〜5点)
シャシー性能 5段階評価(1〜5点)
ヒューマンマシンインターフェイス 5段階評価(1〜5点)
【関連リンク】
StartYourEngines HP
https://www.startyourengines.net
国際モータージャーナリスト、清水和夫が主宰する自動車専門動画ウェブメディア。クルマの限界性能と安全性を徹底的に試すダイナミック・セイフティ・テスト(DST)を始め、国内外の新車インプレッション、注目度の高まる先進安全技術、自動運転など、クルマに関するあらゆるジャンルの動画をサイトアップしています。ぜひぜひ!チャンネル登録のうえご視聴ください。
StartYourEnginesX
https://www.youtube.com/user/StartYourEnginesX