2018年の世界販売は、ルノー・日産・三菱自動車の3社連合は前年同期比1.4%増の約1075万台、FCAは前年比2.2%増の約484万台。仮に両グループが統合すると、1559万台となり、1083万台のフォルクスワーゲン・グループを大きく引き離すことになります。
経営統合の狙いは、ダイムラーが最初に提唱した「CASE(Connected/Autonomous/Shared、Service/Electric)」や「MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)」などへの対応があると想像できます。「CASE」などのキーワードのもと、100年に1度の変革期を迎えているといわれている自動車産業では、お金も人材もいくらあっても足らないといわれていて、IT業界や官民を超えた提携、仲間作りが進んでいます。
また、フォルクスワーゲンとトヨタ、ルノー・日産・三菱連合は、すでに「1000万台クラブ」の仲間入りを果たしていて、「CASE」や「MaaS」に欠かせない規模の力をFCAが以前から模索しているのもよく知られています。
FCAは、カリスマ的存在であった前CEOのセルジオ・マルキオンネ氏がGMとの統合を提案するなど、さらなる規模拡大を画策。マルキオンネ氏が他界した後も2019年3月にFCAはグループPSA(旧プジョーシトロエン)に経営統合を提案したものの、破談になったと報道されています。
ルノーと日産問題がこじれている中、FCAとルノーが統合する利点はあるのでしょうか? FCAは「ジープ」、「クライスラー」ブランドで北米において強みを持ち、欧州では「アルファ ロメオ」、「マセラティ」などの高級ブランドのほか、本家といえる「フィアット」は欧州を中心に小型車でビジネスを展開しています。
一方のルノーは、お膝元欧州で小型車を中心に強みをもつほか、日産・三菱連合とアライアンス、ロシアのアフトワズを傘下におさめています。FCAはロシアなどのマーケットに、ルノーは北米に足がかりを持つことができるという見方もあります。
万一、ルノーとFCAが経営統合した際、こうした既存のビジネスでは利点はありそうですが、「CASE」などへの対応は、サプライヤーやIT業界との提携はあっても電動化と自動運転で強みをもつ日産自動車の存在が大きいはずで、統合の成否はともかく、三菱自動車も含めたFCA、ルノー、日産による動きが慌ただしくなりそうです。
(塚田勝弘)