目次
■欧州では中・高級車を中心に採用が進んでいる
●簡素で低コストな点が魅力
燃費(CO2排出量)規制が厳しい欧州では、DC48Vを電源とする48VマイルドHEVを搭載するモデルが増えています。高電圧(200~300V)を使うフルHEVに比べて、簡素で低コストな48VマイルドHEVの特徴と今後の動向について、解説していきます。
●48VマイルドHEVとは
一般的なマイルドHEVは、エンジンのオルタネーター(発電機)の代わりに小型のモーター/発電機を搭載したHEVです。日本では、スズキがソリオやスイフトなど小型車や軽自動車で積極的に採用しています。
いずれも電源電圧は14Vで、モーターの出力は3kW程度に限られます。回生エネルギー量は少なく、低速時や加速時にエンジン出力をアシストする役割だけで、EV走行するパワーはなく、燃費向上効果も小さいです。
一方48VマイルドHEVでは、モーター出力を10~15kW程度まで増大しています。エンジン出力のアシストだけでなく、定常運転で車速50km/h程度までなら、EV走行ができます。燃費については、フルHEVと14VマイルドHEVの中間の向上効果があります。
48VマイルドHEVは、日本ではまだ採用例がありませんが、欧州では中・高級車を中心に採用が進んでいます。中国でも、積極的に採用しようとする動きがあります。
●燃費以外のメリット
フルHEVに比べて簡素なため、システムコストは低く、さらに電源電圧が60V以下なので漏電などの安全対策のコストもかかりません。電源電圧が60V以上のフルHEVシステムでは、特別な安全対策が必要です。
また通常の14V電源に対しては、電流量が1/4になるため配線の細径化による軽量化やモーターの小型化ができます。さらに将来的には、EPS(電動パワステ)、電動ブレーキ、電子サスペンションなど車体系制御アクチュエーターの48V化による高効率化も考えられます。
●48VマイルドHEVの構成
標準的な構成は、エンジンマウントタイプとクランクシャフトマウントタイプの2種です。
・エンジンマウントタイプ(ベルト駆動)
通常の14Vオルタネーターの代わりに48Vモーターを取り付け、ベルトを介して駆動します。エンジン、トランスミッションの変更が少なく、低コストで対応できるのが最大のメリットです。14V対応に対して、回生エネルギーを有効に使えるので、約2倍の燃費向上(10%程度)が得られます。
・クランクシャフトマウントタイプ(挟み込み)
エンジンとトランスミッションの間に取り付けた、モーター挟み込みタイプです。エンジンとモーターの間にクラッチを装着すれば、モーターだけのEV走行ができます。
・トランスミッションマウント方式
48Vモーターをトランスミッションに取り付ける方式です。トランスミッションから、ベルトまたはギヤでモーターを駆動させます。トランスミッションの構造変更が必要ですが、全体の構成はスマートです。
燃費とコストが中間的なこのようなシステムを、シンプルで汎用性が高いとみるか、中途半端とみるかは、意見が分かれるところです。ある日本メーカーが、2018年中に48VマイルドHEVを採用するという情報がありましたが、フルHEVが普及している日本市場では、それほどの魅力はないように思います。
(Mr.ソラン)