4月5~7日、幕張メッセで開催された「AUTOMOBILE COUNCIL 2019」。展示された往年の名車から「グッドデザイン太鼓判」の番外編として、メーカー系出展車のデザインをチェック。2回目はホンダブースからです!
「HONDA ものづくり-M・M思想~生活を豊かにする人中心のコンセプト~」をテーマにしたホンダは、初代シティと最新のN-VANを中心に、豊かな生活感を打ち出した演出。明るくにぎやかなブースとなりました。
1981年発表の初代シティ(AA型)は、わずか3380mmの全長に1470mmの全高と、当時としては異例のトールボーイスタイル。ブーステーマのM・M思想を具現化する5名乗りパッケージにより、サイドビューは意外にシンプルな2ボックスシルエットです。
しかし、簡素な丸形ランプや素材色のバンパー、サイドモールが、商用とは違った機能美のボディを生み出します。くっきりと明快なキャラクターラインは、必要以上に背の高さを感じさせない役を担っています。
一方、メーカー合同ブースに置かれたカブリオレ(FA型)は1984年の発表。オープンボディという特殊なカスタマイズに対し、ブリスターフェンダーのターボ用ボディを組み合わせたのは、下半身が「負けない」グッドアイデアでした。
ピニンファリーナの手によるソフトトップは標準車と同じ1470mmと、これも絶妙のバランス。さらに、12色ものボディカラーとカジュアルなチェック柄のシート地との組み合わせはセンスがよく、およそ日本車とは思えない個性を発揮しました。
展示を手がけた四輪R&Dセンター・デザイン室の石野康治氏によると、今回の展示は、最近その初代の1/4モデルを作ったのがキッカケだったそう。発表から38年、デザイン部にも当時を知らない世代が増え、もっと自社のヘリテージを意識するべく、古い図面からデータを起こして製作したと言います。
「シティはトールボーイが話題でしたが、80年代を迎え、初めて一体成形型の樹脂バンパーを採用するなど、自動車デザインの表現が大きく変革した時期のクルマでもあるんです。この流れがワンダーシビックにつながり、ホンダ独自の世界観を作りました」
2代目のシビックが初代のキープコンセプトで伸び悩み、デザイン的に新しさを打ち出せない時期が続いた中、初代シティはホンダの新世代デザインを最初に示したと言えます。では、その80年代デザインの魅力とは?
「日本の自動車産業の生産技術が向上し、各社が多彩な造形にチャレンジした結果、豊かな個性が生まれた。また、安全や環境への条件が現在ほど多くなかったため、純粋にカッコよさを追求することができたのではないでしょうか」
前回のトヨタ同様、ホンダも80年代デザインを見直す流れにあるのが興味深いところ。そういえば、年始のジュネーブショーに登場した「Honda e」はその具体的な表現なのかもしれませんね。
(すぎもと たかよし)