井出有治絶賛!メガーヌR.S. カップはしなやかかつ軽やかなのにスポーティ度はアップ!? これがルノー流スポーツカーの作り方・その2

●「シャシーカップ」「4HCC」「DASS」、これがまたイイ仕事をしてくれます!

各レートが高められているシャシーカップ。対シャシースポールでスプリングレートはF:23%/R:35%、ダンパーレートは25%、またフロントアンチロールバーは7%アップされています。

また、このシャシーカップの「4HCC(4輪ハイドロリック・コンプレッション・コントロール)」の技術は、ラリー参戦からフィードバックされているそうです。

ダンパーinダンパーを特徴とするHCC。シャシーカップはシャシースポール(R.S.)に対してバンプラバーが10mm高く、66mm(スポール)に対して76mm(カップ)に設定。その違いは?というと、ダンパーが動いた時、シャシーカップのほうが先にバンプストッパーに当たって抑え、そこからHCCが作動する。戻るときはそのままのエネルギーで戻るのではなく、ダンパーが戻して行く=ダンパーが制御する、ということ。シャシースポールのほうはHCCとバンプストッパーが同時に働きますが、シャシーカップは先に抑えて働かせる…という違いがあります。

ン〜? これは理論的なことをアタマで考えるよりも、井出さんのインプレッションを聞いたほうが分かりやすそうです!

「このHCCを試すため、わざと縁石に乗ってみました! それでもドーンという突き上げ感はなかったですね。ドンと縁石に乗ってもダンパーがしっかり制御されているため、サスペンションがバーンと速く戻ってこないので、しっかりと、かつしなやかに追従してくれる感覚が分かりました。だから乗り心地もいいんですよ」(井出さん)。

この『乗り心地のいいスポーツカー』は、ルノーの狙いのひとつでもあるそうです。「乗り心地もいいR.S. カップで、誰にでもサーキットを速いラップで走って欲しい!」、サーキットが得意なR.S. カップですが、サーキット超専用の尖った仕様にはしていない、ということです。

また「DASS(ダブル・アクシス・ストラット・サスペンション)」は初代のR.S.から使用されている機構。今回のR.S. カップではその進化版が採用されています。ステアリング操作やサスペンションの上下動で暴れだす動きを制御し、常にタイヤの中心に仕事をさせる、そんな機能です。

「このフィーリングだったらストリートの路面が悪いところでも足の堅いイヤ〜な感じはなく、スムーズに走れますね!」(井出さん)。

●「R.S. カップ」専用のトルセンLSDは『逃げない』

R.S.カップ専用のトルセンLSD。開発段階での要望は「オープンデフ!」、しかしレーシングカーではないのでどんな路面状態(雪・雨等)でも日常的に使えなければ意味がありません。いろんなトルク配分パーセンテージをシュミレーションし、採用された答えがR.S.カップ用に専用開発された「ジェイテクト製トルセンType-B」です。これもまた、試乗テストをしたうえでのインプレッションを聞いてみます。

「R.S. カップに採用されているトルセンLSDですけど、R.S.の電子制御R.S.デフと比べて『効き』というのが明らかに感じられました。それがまたクルマの全体的なスタビリティの仕事もしていて、クルマがしっかりとボディ剛性、サスペンション、すべてトータルでクルマが軽やかに、そしてターンインするときはなるべく軽い状態でスムーズにコーナーに入っていく。そこからアクセルを開けてトラクションをかけたい、横に逃がしたくない!というときには、このトルセンLSDがうまく機能しているということを感じられましたね」(井出さん)。

シャシーカップやトルコンLSD、バイマテリアル・フロントブレーキ、また4コントロールや4HCC等々、「R.S. カップ」専用の新システムと「R.S.」共通のシステム、そのひとつひとつを1台のクルマとして組み合わせてセットアップしていった結果が、井出さんが最初に感じた『軽やか』への答えなのでしょう。

「先ほど聞いたんですけど、セッティングする開発メカニックはよく、すべてがひとつのチェーンに繋がっている…と言っているそうです。ひとつ性能を上げたら他も全部上方向へ合わせていく。やはりクルマのセッティングというのはバランスが大切なんですよね!」(井出さん)

サーキットが得意とはいえ専用ではない。ハイパフォーマンスではあるけど日常的にも使える。だから、あえて4ドア。でも5MT! ルノーの作る「市販車スポーツカー」の目指すところが見えますね!

次回その3では、井出さんお気に入りポイントのひとつ「マニュアルミッション」の感覚と「1.8L直噴4気筒+ボールベアリング式ツインスクロールターボ」、そして「タイヤ」など、ルノー開発陣のノウハウを全てつぎ込み、トータルにセットアップされた「メガーヌR.S. カップ」をさらにチェックしていきます。

(試乗:井出 有治/文:永光 やすの/写真:平野 陽)

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この記事の著者

永光やすの 近影

永光やすの

「ジェミニZZ/Rに乗る女」としてOPTION誌取材を受けたのをきっかけに、1987年より10年ほど編集部に在籍、Dai稲田の世話役となる。1992年式BNR32 GT-Rを購入後、「OPT女帝やすのGT-R日記」と題しステップアップ~ゴマメも含めレポート。
Rのローン終了後、フリーライターに転向。AMKREAD DRAGオフィシャルレポートや、頭文字D・湾岸MidNight・ナニワトモアレ等、講談社系車漫画のガイドブックを執筆。clicccarでは1981年から続くOPTION誌バックナンバーを紹介する「PlayBack the OPTION」、清水和夫・大井貴之・井出有治さんのアシスト等を担当。
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