●土地勘のない雪道では、視界の良さと「e-BOXER」が頼もしい
例年、北海道の特設コースを中心に開催されていたSUBARUのプレス向け雪上試乗会は、昨年から一般公道にステージを移しています。
その狙いは、クローズドコースで限界を知ることも大切ですが、一般のドライバーと同じ公道を走ることで、リアルワールドでのSUBARU AWD各モデルの実力をじっくり体感できる点にあります。
2019年は、豪雪地帯としてニュースなどで度々登場する青森県酸ヶ湯に続き、日本2位の豪雪地域として知られる山形県肘折温泉付近を必ず通るという1泊2日の行程でした。この地域では、2018年には最深積雪ランキング2位となる445cmを記録しているそうです。
抽選で決まった車種は、最初がフォレスターの「e-BOXER」搭載「Advance」。車両価格は309万9600円で、メーカーオプションのパワーリヤゲート、アイサイトセーフティプラス(視界拡張)、ルーフレール(ロープホール/シルバー加飾付)の3点(28万800円)が加わり、オプションを含めると338万400円という価格になります。
土地勘がなく、しかも雪国を走らせると、頼もしく感じるのは「視界の良さ」。狭い街中での取り回しはもちろん、雪の壁が回廊のように続く山岳路では、雪の壁で隠されがちな左右から出てくるクルマや除雪車などにもいち早く気づくことができます。
幸いにもホワイトアウトするようなシーンはありませんでしたが、フロントスクリーンのみならず、三角窓、サイドウインドウを含めたワイドな前方と斜め前の視界、そしてバックするときも後方・斜め後方の視界も良好で、安心感を抱かせてくれます。
山岳路では、雪の壁から崩れた雪の塊が落ちていることもありますし、路面上の雪が凹凸になっていることもありますが、220mmもの最低地上高がありますから、公道内である限り、どんな段差でも余裕をもって走行できました。
雪道を歩くため、少し滑りにくい靴を履いていましたが、前後ともにドア開口部(とくに上方側)が広く、リヤフェンダーの形状からSUVの泣き所でもある後席ドアの足元もスッキリしているフォレスターの乗降性の良さも確認できました。
「e-BOXER」はバッテリー残量により、発進時と低速域はモーターだけで走行できます。急発進など「急」が付く操作が御法度の雪道では緻密な制御と、きめ細かいトルク感が得られるモーターのありがたみも実感しました。
さらに、滑りやすい急な下り坂でも回生ブレーキの制御が入りますので、アイスバーンのようなシーンでもメカブレーキだけに減速を頼らずに済むのも利点に感じられました。もちろん、パドルシフトを駆使してエンジンブレーキを利かせる手や、「X-MODE」ヒルディセントコントロールを使う手もあります。
滑りやすい路面でのコーナリング時には、回生ブレーキ時にアンダーステアが発生するという課題も残るそうですが、前輪のスリップ量を把握することで制動トルクを後輪に配し、タイヤのスリップアングル(横力)を確保することで旋回しやすくなる制御により克服しています。
また、SUBARUのAWDに乗るのであれば、今回も万全の雪上・氷上性能を発揮してくれたブリヂストンの「ブリザックVRX2」のような信頼できるスタッドレスタイヤを履き、雪国ドライブを楽しんでもらいたいものです。
※上記写真には、「Advance」以外のグレードも含まれています。
(文/塚田勝弘 写真/SUBARU、塚田勝弘)