●マツダブランドの「入り口」となる新型・Mazda 3が目指したものとは?
今年も大いに盛り上がった「東京オートサロン2019」。今回はメーカー系ブースで気になったグッドデザイン5台について、担当デザイナーに突撃インタビューを敢行。5台目は特別版として、初日の11日(金)にマツダブースで行われたトークショーの模様をお届けします。
トークセッションは開発主査の別府耕太氏(写真上・中央)、チーフデザイナーの土田康剛氏(同右)、司会にデザイン本部田中秀昭氏(同左)の3名で進行。新型「Mazda 3」の開発秘話が披露されました。冒頭は、ひとつの銘柄ながら、ハッチバックとセダンでまったく別のボディが与えられた経緯が語られました。
別府「開発に当たって、土田と世界各所のユーザーに会いに行ったのですが、そこで聞いたのはハッチバックとセダンがまったく別のクルマとして認識されていることだったんですね。じゃあ、もう別に作るしかないかと」
土田「実は僕と別府は同期入社で、お互い強い信頼関係があった。だからこそこんな無理が通ったんだと思います。他の主査だったらこんなことはあり得ない」
マツダの世界シェアは約1.5%。100人にひとりなら、そのユーザーにしっかり寄り添うのが大切で、コスト云々はあくまで社内の都合と語る別所氏。一方、新しい世代の「魂動デザイン」は引き算の美学であることを掲げますが、具体的にはどのような深化を狙っているのでしょうか?
土田「2015年のRX-VISIONのエモーショナルな艶っぽさ、2017年のVISION COUPEの凛とした緊張感。このふたつの方向性の幅を広げることにチャレンジしています。現行モデルのキャラクターラインを引くことで見えて来る光の移ろいもそのひとつですね」
そして、評価の高いデザインを支えているのが生産現場。たとえば、新しい「Mazda 3」の微妙なドアパネルの曲面は通常の工程では出せないもの。それを実現させるのがマツダ独自の文化「共創」だといいます。
別府「ふつうデザイナーと生産技術は敵対関係にあるんですね。新型も、原案のモデルを見てもらうと、ほとんどの部署は「いいね!」という反応なのですが、生産だけは「えー、コレ作るの?」と……」
土田「これも珍しいことなんですけど、モデルを直接生産部に持ち込んで丁寧に説明したんです。そこで「これなら頑張ってみよう」というモチベーションを持ってもらう。僕は歴代デザイナーでいちばん生産部に通ったんじゃないかな」
かつて、マツダは乗り込むと「ガッカリする」というくらい内装のクオリティが低いという評価を受けていました。そのため、現行の新世代商品群から質感向上に取り組みを始めましたが、新型ではさらなる追求が行われたそうです。
土田「現行車と比べても圧倒的に質感を高めています。手に触れる部分はすべてソフト素材にしているので、是非実車を見て欲しいですね。もちろんコストは嵩みますが、そこは別所に頑張ってもらった」
別府「たとえばすべてのスイッチやレバーに、マツダらしいフィードバックがあるよう調整しています。押した感じやカチッとした感覚、触ったときの感触まで追求しているんです」
「Mazda 3」はマツダのメイン車種として、ブランドの入り口となる商品だと認識されています。そのため、別府氏は「乗って運転することによってドライバーがポジティブになれるようなクルマ」を目指したいとし、本トークショーを締めくくりました。
(まとめ・すぎもと たかよし)