【ネオ・クラシックカー・グッドデザイン太鼓判:番外編】新型クラウン登場。いま、歴代クラウンのデザインを振り返る!(15代目・最終回)

80〜90年代の日本車デザインを振り返る本シリーズ。今年6月、新型クラウンが登場したのを機に、番外編として歴代クラウンのデザインを振り返ります。今回は最終回として、その現行15代目に迫ります。

巨大なグリルを筆頭とした「変化」で、ユーザーの若返りを目指した先代。その勢いを残し、さらに今後トヨタが推し進めようとするコネクティッドカーの初代として登場したのが、今年発売の15代目クラウンです。

重心の低さが特徴の新しいプラットホームにより、全高を下げたボディはスタンスのよさが自慢。クラウン史上最高にスポーティと自ら豪語するだけあって、低く構えた姿勢はたしかに精悍です。

「強さとエレガンスの両立」を実践するために選んだ手法が、クラウン初の6ライトボディ。欧州車で人気を博す4ドアクーペ的スタイルを、日本伝統の高級車に持ち込んだ格好ですが、ただ、その伸びやかなグラフィックに質感が足りないのが惜しいところ。

広いサイドパネルに変化を与えるとするショルダーラインは、断面の異なる2本を走らせましたが、これが少々煩雑。さらにその下の広いパネルも特段の個性がなく、ノッペリした感じがこれまた残念です。

王冠を表した巨大グリルは先代に比べて立体感を得ましたが、アンダーグリルの表現がいささか派手に過ぎるもの。一方、木の葉のようなリアランプは妙に軽々しく、カローラクラスのような格下感があります。

前面からドアまで大きくラウンドさせた中に、水平基調の比較的コンパクトなインパネを置いたインテリアはかなり斬新。コンセプトを品位と知性にしただけあって、従来のコテコテな高級感覚からの脱皮を試みたようです。

シャープなアッパーグリルとランプに、巨大なアンダーグリルを組み合わせた最近のトヨタ顔は「キーンルック」と呼ばれています。もともとは、欧州市場で没個性とされていたトヨタ車に、統一したイメージを植え付ける目的だったそう。

各パーツを縦横に引き伸ばすこの手法は、なるほど見る人にインパクトを与えますが、どこか底の浅さを感じてしまうもの。6ライト化も大きな変化ですが、果たして今後のクラウンをしっかり見据えた上でのデザインだったのかが疑問です。この15代目の評価がどのように固まるか、今後に注目です。

●主要諸元 クラウン 2.0 G(8AT)
形式 3BA-ASR230
全長4910mm×全幅1800mm×全高1455mm
車両重量 1710kg
ホイールベース 2920mm
エンジン 1998cc 直列4気筒直噴ターボ
出力 245ps/5200-5800rpm 35.7kg-m/1650-4400rpm(ネット値)

(すぎもと たかよし)

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すぎもと たかよし

東京都下の某大学に勤務する「サラリーマン自動車ライター」。大学では美術科で日本画を専攻、車も最初から興味を持ったのは中身よりもとにかくデザイン。自動車メディアではデザインの記事が少ない、じゃあ自分で書いてしまおうと、いつの間にかライターに。
現役サラリーマンとして、ユーザー目線のニュートラルな視点が身上。「デザインは好き嫌いの前に質の問題がある」がモットー。空いた時間は社会人バンドでドラムを叩き、そして美味しい珈琲を探して旅に。愛車は真っ赤ないすゞFFジェミニ・イルムシャー。
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