【ネオ・クラシックカー・グッドデザイン太鼓判:番外編】新型クラウン登場。いま、歴代クラウンのデザインを振り返る!(14代目)

80〜90年代の日本車デザインを振り返る本シリーズ。今年6月、15代目のクラウンが登場したのを機に、番外編として歴代クラウンのデザインを振り返ります。

時代が進み、クラウンはもちろんトヨタとしても変化をしなくてはならない。新しい社長による「もっといいクルマ作りを」のスローガンのもと、改革を進めるトヨタが2012年に送り出したのが14代目のクラウンです。「新しい常識でクラウンを作る」としたキーワードは、とりわけフロントフェイスを中心に変革を敢行。アッパーグリルとロアグリルを融合し、新たに王冠を象徴する造形を作り上げました。

ただ、これに続くボディは比較的おとなしいもの。サイドのキャラクターラインの「折れ」自体は明快ですが、上面の抑揚の加減のためか若干ボディが痩せて見えるのが惜しいところです。同じく、流麗なキャビンに沿うサイドグラフィックは、後端が持ち上がることで軽快さを得つつも、どこか落ち着きのない曖昧な形状に。これに続くリアクオーターも、大きなウネリによってクラス感が欠如しています。

リアは、フロントの王冠を反復するようなメッキが子供っぽいことに加え、ボディサイドまで回り込ませたランプの形状が変に攻撃的で安っぽく、クラウンらしい質感を感じません。手工芸品をイメージしたというインテリアは質感の高いもの。しかし「囲む・重ねる」をコンセプトにした造形は、曲線や曲面の組み合わせが少々クドく、装飾過多気味なのが残念です。

かつての80点主義以降、仮に保守的なトヨタがあったとすれば、若いリーダーが変革を持ち込むのは自然なこと。しかし、たとえばデザインにおける変化・改革とは、顔を派手にしたり、全身をピンクに塗るようなことではない筈です。

目立たせることを優先したスタイルは、一見して「トヨタが変わった」と思わせる効果に富んでいます。ただ、そうした造形は短命で後年まで語られることは希であり、デザインとしてはもっとも残念な状況なのです。

●主要諸元 クラウン ロイヤルサルーンG(6AT)
形式 DBA-GRS210
全長4895mm×全幅1800mm×全高1460mm
車両重量 1590kg
ホイールベース 2850mm
エンジン 2499cc V型6気筒DOHC
出力 203ps/6400rpm 24.8kg-m/4800rpm(ネット値)

(すぎもと たかよし)

この記事の著者

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すぎもと たかよし

東京都下の某大学に勤務する「サラリーマン自動車ライター」。大学では美術科で日本画を専攻、車も最初から興味を持ったのは中身よりもとにかくデザイン。自動車メディアではデザインの記事が少ない、じゃあ自分で書いてしまおうと、いつの間にかライターに。
現役サラリーマンとして、ユーザー目線のニュートラルな視点が身上。「デザインは好き嫌いの前に質の問題がある」がモットー。空いた時間は社会人バンドでドラムを叩き、そして美味しい珈琲を探して旅に。愛車は真っ赤ないすゞFFジェミニ・イルムシャー。
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