【ネオ・クラシックカー・グッドデザイン太鼓判:番外編】新型クラウン登場。いま、歴代クラウンのデザインを振り返る!(11代目)

80~90年代の日本車デザインを振り返る本シリーズ。今年6月、15代目のクラウンが登場したのを機に、番外編として歴代クラウンのデザインを振り返ります。

クラウンらしさはあるものの、クルマの進化としては停滞感のあった先代。21世紀を目前に、これを一気に打開すべく、高い動力性能を中心とした商品展開に打って出たのが、1999年発表の11代目クラウンです。

新世代プラットホームによるボディは、フロントショートオーバーハングとビッグキャビンという、クルマ本来の性能を大きく底上げする姿勢を示すもの。同時に、伸ばされたリアは積載性のよさを感じさせます。

長く続いたハードトップからセダンボディに変更したのは、ロイヤルに加えて「アスリート」を追加し、強く、高い動力性能による走りのイメージを示すため。ただし、ブラックのピラーはこれまでの伸びやかなグラフィックを担保します。

同じ硬質でも、先代に比べて角Rを柔らかくすることでボディは筋肉質へ。継承した水平基調で端正さを残しつつ、ガッチリと重量を感じさせるボディが、ドイツ車的な質実さも表現します。

グリルから離れて独立したフロントランプは力強さを演出、そのグリルもシンプルな格子として欧州車的な佇まいを後押しします。リアランプは横長を引き継ぎますが、従来より縦に厚くすることで威厳を発揮。

インテリアもボディに準じてパネル類が水平基調に。各パーツに厚みを持たせることで、質実さとともに大らかでゆったりした表現としました。また、ウッド調パネルも大ぶりとすることで豊かなイメージを打ち出します。

「21世紀へ。このクラウンで行く。」のコピーどおり、新しい時代を迎えるにあたって、国内専用のクラウンにも「走り」が必要だと判断された11代目。これを明快にするため、欧州高級車的なアプローチを取ったようです。

しかし、それでは一体クラウンとは何なのか?という矛盾にも似た課題が提示されたのは皮肉なところ。よくも悪くも、この後はその重いテーマを常に意識させられることになるのです。

●主要諸元 クラウン ロイヤルサルーンG(5AT)
形式 GH-JZS175
全長4820mm×全幅1765mm×全高1455mm
車両重量 1600kg
ホイールベース 2780mm
エンジン 2997cc 直列6気筒DOHC
出力 220ps/5600rpm 30.0kg-m/3600rpm(ネット値)

(すぎもと たかよし)

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すぎもと たかよし

東京都下の某大学に勤務する「サラリーマン自動車ライター」。大学では美術科で日本画を専攻、車も最初から興味を持ったのは中身よりもとにかくデザイン。自動車メディアではデザインの記事が少ない、じゃあ自分で書いてしまおうと、いつの間にかライターに。
現役サラリーマンとして、ユーザー目線のニュートラルな視点が身上。「デザインは好き嫌いの前に質の問題がある」がモットー。空いた時間は社会人バンドでドラムを叩き、そして美味しい珈琲を探して旅に。愛車は真っ赤ないすゞFFジェミニ・イルムシャー。
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