【ネオ・クラシックカー・グッドデザイン太鼓判:番外編】新型クラウン登場。いま、歴代クラウンのデザインを振り返る!(9代目)

 

80~90年代の日本車デザインを振り返る本シリーズ。今年6月、15代目のクラウンが登場したのを機に、番外編として歴代クラウンのデザインを振り返ります。

1989年、事実上トヨタブランドの頂点として登場した初代セルシオ。これに対し「マジェスタ」という上級グレードを設けることで自身の地位を保ち、2種類のハードトップボディを用意したのが、1991年登場の9代目クラウンです。

比較的華奢なボディでエレガントさを表現していた先代までと比べ、格段にボリュームアップを果たしたボディは90年代のそれ。「伝統の継承と新世代への飛躍」のコンセプトは、室内の広さを求めたパッケージングにもよく表れています。

空力を考慮したボディは面一化が顕著で、とりわけ「躍動感」と「流麗」をテーマにしたロイヤルシリーズは全身張りのあるパネルが特徴。同時期のカローラに似た、極細のキャラクターラインとボディ色のモールが質感を上げます。

横長のコーナーランプはセルシオに準じる一方、ボディの面一化に沿ったフロントランプとグリル、横一文字のリアランプとガーニッシュはあたかも「大きなカローラ」のようで、各車種で統一したイメージを持たせようとする意図が感じられるところ。

インテリアは、曲面多用の中、構成部品の一体化や面一化が大幅に進み、新たな高品質感を醸し出します。同様にシームレス感覚のシートなども含め、これ見よがしではなくスッキリした空間が印象的。

マジェスタに加え、アリストという兄弟車を展開することでセルシオとは異なる存在感を示したクラウン。その作戦は相応の成功を収めますが、一方で伝統のロイヤルシリーズの影が薄くなった感は否めません。

よくも悪くも日本独自の高級車イメージを構築してきた先代までに対し、いわば「普通のクルマ」の要素が強くなった9代目。ここからクラウンは、まったく新しい個性を追い求めて模索することになるのです。

●主要諸元 クラウン・4ドアHT 3000ロイヤルサルーンG(4AT)
形式 E-JZS145
全長4800mm×全幅1750mm×全高1415mm
車両重量 1680kg
ホイールベース 2730mm
エンジン 2997cc 直列6気筒DOHC
出力 230ps/6000rpm 29.0kg-m/4800rpm

(すぎもと たかよし)

この記事の著者

すぎもと たかよし 近影

すぎもと たかよし

東京都下の某大学に勤務する「サラリーマン自動車ライター」。大学では美術科で日本画を専攻、車も最初から興味を持ったのは中身よりもとにかくデザイン。自動車メディアではデザインの記事が少ない、じゃあ自分で書いてしまおうと、いつの間にかライターに。
現役サラリーマンとして、ユーザー目線のニュートラルな視点が身上。「デザインは好き嫌いの前に質の問題がある」がモットー。空いた時間は社会人バンドでドラムを叩き、そして美味しい珈琲を探して旅に。愛車は真っ赤ないすゞFFジェミニ・イルムシャー。
続きを見る
閉じる