目指せゼロヨン10秒の壁突破!オートセレクトS30Z、さすがの実力11秒台!その2【OPTION 1986年1月号より】

激走軍団、かく戦えり!

気温19度、快晴、無風・・・願ってもない恵まれたコンディション。一直線に伸びた計測ストレート記録への期待が募る。過去最高はRE雨宮ドラッグ7の10秒498。その更新はもとより、9秒台突入も夢ではない! 各エントラントも9秒の声に燃えているのは明らかだ。

トライアルタイムは午前8時から12時までフルに4時間をキープ。その間、制限なしに心ゆくまで走り込みOKなのだ。キャブやタイヤのエア圧をはじめ、セッティングを詰めながら一発勝負のトーナメント戦とは違い、純粋な記録挑戦が可能というわけだ。

現在、日本のゼロヨン界の頂点を競うマシンと、話題&注目の意欲マシンがずらり勢揃い、コースは静かな緊張に包まれた。

まずは、コース&マシンの調子を見ての完熟走行か、との予想は見事に裏切られた。各車、小手調べとはいえ、120%全開なのだ。RSヤマモトのドラッグサニーは一発めでボン!とミッションが異音を発した。数トライを経ずして、ビルドサニーが、そしてJUN3.4L・Zが…。中盤、各車ピットストップが長い。JUNのメカニックはなんと、谷田部の街までトラックを飛ばしてドライブシャフトを購入。ファイナルの再トライに臨んだ。が、しかし…。

それにしても400mの壁は意外に厚かった。「ドラッグスリックがグリップしない。路面温度が低すぎるんじゃないか?」「とにかく、踏めば何速でもホイールスピン! アクセルが全開にできないゼ」、そんな声がエントラントからあがる。

過去、ゼロヨン10秒台をマークしているマシンは7台。が、10秒台に突入したのは歴代2位のタカハシタイヤ・コルベットのみ。他車はコンスタントに11秒台はマークするものの、そこから伸び悩んだのだ。

雨宮RX-7、ビルドサニー、サコRX-7、柿本Zはエンジン、あるいはメカトラブルに沈んだ。歴代4位のTBO・Zも直進安定性に悩みをみせる。エンジンをL型3Lツインターボから5.7L・V8に積み換えて記録を狙う期待のシグマ・カミナリZもマイナートラブルでピットストップが長い・・・。

レーシングカーベースのエンデューロRX-7は、最後はFRPのボディカウルを外してまでトライしたものの、どうしてもタイムが伸びない。そして4時間後…歴代ベスト7で自己記録を更新したのもタカハシタイヤ・コルベット、ただ1台に終わった。

とはいうものの、全11回トライを繰り返した「ストリート発展型」のオートセレクトZをはじめ、上位9車までがコンスタントに、あるいは余裕で11秒台をマークしているのだ。その実力のほどは十二分に実証されたといっていい。

さらに12秒台には、街乗り仕様のABR・Zや、ゼロヨンでは異色ユニット、トヨタ3T-G改2LターボのATS-BMスターレットらが名前を連ねた。最高速日本一、トラスト・ソアラの「タイヤまでまんま最高速仕様」のゼロヨンタイムもちょっと気になるはずだ。

ゼロヨン、そこは記録だけが、それもBEST記録のみがものをいう世界だ。が、オレたちにとって「マシンのチューニングとその実力」もしっかり知りたいところだ。そしてこのスペシャルチューンがストリートへいかにフィードバックされるか、その点も大いに楽しみたい!

この記事の著者

永光やすの 近影

永光やすの

「ジェミニZZ/Rに乗る女」としてOPTION誌取材を受けたのをきっかけに、1987年より10年ほど編集部に在籍、Dai稲田の世話役となる。1992年式BNR32 GT-Rを購入後、「OPT女帝やすのGT-R日記」と題しステップアップ~ゴマメも含めレポート。
Rのローン終了後、フリーライターに転向。AMKREAD DRAGオフィシャルレポートや、頭文字D・湾岸MidNight・ナニワトモアレ等、講談社系車漫画のガイドブックを執筆。clicccarでは1981年から続くOPTION誌バックナンバーを紹介する「PlayBack the OPTION」、清水和夫・大井貴之・井出有治さんのアシスト等を担当。
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