【トヨタ・センチュリー試乗】すべては圧倒的な快適空間のために。世界に誇れる「日本の至宝」

しかしながら、この有り余るパワーを使うのは何かトラブルが起きたとき、たとえば暴漢に襲われた際の緊急避難などで、普段は使われないものです。しかし、もしもときのためにセンチュリーでは必要なパワーなのです。

 

普段の走行ではこのパワーの10分の1も使わないでしょう。アクセルをゆったりと踏み込めば、スーッとクルマが発進します。ショーファードリブンでは発進したことも、停止したことも、加速していることも、コーナリングしていることも…できるだけ後席には知らせないほうがいいのです。

ですが、ドライバーはそれを理解できないと安全な運転はできません。この矛盾をギリギリのところでクリアしているのが素晴らしいのです。レクサスのようなドライバーズカーではありませんので、ドライバーが感じるインフォメーションは希薄です。にも関わらず、正確にクルマの動きを伝えるところには驚きさえあります。

そして、その感覚があるからこそ、ショーファー(運転手)は、パッセンジャー(乗員)を快適にそして安全に乗せることができるのです。

後席は広く快適です。ソファに座っているかのようなゆったりとした姿勢で乗ることができます。この空間はあるときは仕事場であり、ある時はベッドルームであり、あるときは応接間でもあります。そうしたことが見事にこなしてくれる空間と静かさがそこにはあります。

センチュリーはほとんど輸出を考えられていない国内専用車と言ってもいいほどの存在です。しかし、もし輸出が行われれば多くの国で歓迎されるでしょう。

超が付く高級車、本物のショーファードリブンは世界でも数えるほどしか存在しません。いわば、ロールス・ロイスと肩を並べられるのがセンチュリーです。このクルマはまさに日本の至宝と言って間違いないのです。

(文・写真:諸星陽一)

この記事の著者

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諸星陽一

1963年東京生まれ。23歳で自動車雑誌の編集部員となるが、その後すぐにフリーランスに転身。29歳より7年間、自費で富士フレッシュマンレース(サバンナRX-7・FC3Sクラス)に参戦。
乗って、感じて、撮って、書くことを基本に自分の意見や理想も大事にするが、読者の立場も十分に考慮した評価を行うことをモットーとする。理想の車生活は、2柱リフトのあるガレージに、ロータス時代のスーパー7かサバンナRX-7(FC3S)とPHV、シティコミューター的EVの3台を持つことだが…。
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