トヨタ、ホンダ、日産、三菱自が充電インフラ整備で協力する訳とは?

既報のとおり、7月29日にトヨタ、ホンダ、日産、三菱自の4社がEVやPHV用などの充電器設置活動を共同で推進すると発表しました。 

EVで先行する日産はルノーと併せて「2016年度までにEVの累計販売150万台(2.5万台/月)を目指す」としていたものの、目標期間が半分経過した現時点で10万台(約3,300台/月)程度に留まっており、新聞報道などによると目標達成時期を先延ばしするという情報も。 

日産リーフ

こうしたEV販売が足踏みしている原因は他ならぬ一回充電当りの航続距離の短さ。 

日産リーフの場合、カタログ上の航続距離は228km(JC08モード)ですが、カタログにも明記されているとおり、走り方やエアコンなどの使用状況によって航続距離が大きく変化するようです。 

市場情報では街中の通常走行で150km程度、高速道路を100km/hで走行の場合100km、冷房使用時は10%減、暖房使用時は15%減といったところが実力のようで、特に冬場はヒーター使用により厳しい状況になる模様。 

こうしたことから、EV普及には早期にバッテリー革命が起きない限り、充電スタンドの拡充が急務となっています。 

政府は既に充電器設置費用の最大約3分の2を助成する補助金制度を導入、充電器整備を進める方針を打ち出していますが、現在日本に設置されている急速充電器は約1,700基程度で、普通充電器は3,000基強と不十分な状況。 

大手自動車4社は政府の補助金の申請期限である2014年2月末までに急速充電器設置台数を現在の2倍以上となる4000基規模に、普通充電器を8000基規模に引き上げることを目指しています。

日経新聞によると、こうした今回の共同発表の最大の狙いはメーカー側が一致団結の姿勢を示すことにあると言います。 

そもそも今回の動きは東京電力が中心的な役割を務めていた日本独自の急速充電規格「CHAdeMO」協議会から生まれた「充電網整備推進機構」に端を発している模様。 

出展 充電網整備推進機構

トヨタ、ホンダ、日産、三菱自の自動車4社と大手電力各社が協力して全国に「充電スタンド」を網羅すべく、同機構を発足させる直前に福島の東電原発事故が発生。 

中部電力が東電の後を継いで、2011年12月に同機構をようやく発足させる段階になると、今度は肝心の日産が不参加の事態に。 

その後日産はNECや住友商事などと充電サービス会社「ジャパン チャージ ネットワーク(JCN)」を設立するも、独自路線をとった事が結果的に限界を招き、EVのインフラ拡充遅れに繋がった模様。 

一方トヨタやホンダもPHVモデルを持っており充電環境の改善を必要としています。 

ホンダアコード PHV

そこで、バラバラに動いている充電関連事業を再度取り纏めて出直すことになったのが今回の共同発表だったという訳です。 

トヨタやホンダが先行する「究極のエコカー」ことFCV(燃料電池車)の一般発売が2年後に迫る中、「水素ステーション」は石油元売りやプラント大手がバックアップしているだけにインフラ拡充の収束が早いとみられ、EVを主力とする日産・三菱自などの陣営にとってはいよいよEV普及に向けた正念場を迎えそうです。 

■充電網整備推進機構の取組みについて(PDF資料)
 http://www.cev-pc.or.jp/chosa/pdf_o/1-03.pdf 

■ジャパン チャージ ネットワーク(JCN)
    http://www.charge-net.co.jp/

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 (Avanti Yasunori) 

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この記事の著者

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Avanti Yasunori

大手自動車会社で人生長きに渡って自動車開発に携わった後、2011年5月から「clicccar」で新車に関する話題や速報を中心に執筆をスタート、現在に至る。幼少の頃から根っからの車好きで、免許取得後10台以上の車を乗り継ぐが、中でもソレックスキャブ搭載のヤマハ製2T‐Gエンジンを積むTA22型「セリカ 1600GTV」は、色々と手を入れていたこともあり、思い出深い一台となっている。
趣味は楽器演奏で、エレキギターやアンプ、エフェクター等の収集癖を持つ。
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