80〜90年代の日本車デザインを振り返る本シリーズ。今年6月、15代目のクラウンが登場したのを機に、番外編として歴代クラウンのデザインを振り返ります。
1950年代、日産のオースチン、いすゞのヒルマンなど、各国産メーカーは欧州車のノックダウン生産により本格的な高級乗用車を市場に送り出し始めました。そうした中の1955年、あくまでも自社開発を貫いて発表されたのが初代のクラウンです。
キックアップしたショルダーライン、フロントフェンダーの装飾モール、テールフィン風のリアなど、基本的な佇まいは当時主流のアメリカ車の影響を強く感じますが、社内デザインとして独自の存在感が肝です。
初期型のフロントグリルは、エンブレムを中心に左右のコーナーランプへつなげた独立タイプ。ボディに張り付かないことで、グリル周囲やメッキバンパーと組み合わせても、抑制の利いた高級感を演出します。さらに、キャビンとボディの間にはぐるりと1周モールが回され、クルマ全体に高い質感を与えます。
また、逆スラントのリアピラーや、前後の曲面ガラス、ショルダーラインやボリューム感のあるリアパネルなど、ボディ全体が張りのある面で構成。特徴的な観音開きのドアもこの豊かな面を強調し、アメ車的な佇まいの中に、どこか欧州車が持つ凝縮感を見ることができます。
内装はシンプルながら丁寧に仕立てられます。機能的なインパネは鉄板むきだしですが、ボディ色ではなく内装色に合わせるという凝りよう。
初代クラウンは、先行する欧州車への対抗車であり、しかも高級乗用車という位置づけから相当な意欲作となりました。もちろん造形的にはライバルの模倣も見られますが、自社開発にこだわっただけの独自性は表現できたようです。
●主要諸元 トヨペット クラウン(3MT)
形式 RS
全長4285mm×全幅1680mm×全高1525mm
車両重量 1210kg
ホイールベース 2530mm
エンジン 1453cc 直列4気筒
出力 48ps/4000rpm 10.0kg-m/2400rpm
(すぎもと たかよし)