エンジンに関しても、2.6リッターのRB26DETTが完成しました。ナトリウム封入バルブや6連スロットルなど、勝つためには技術を惜しまず投入しました。開発当初はアイドリングがなかなか安定せず3000回転近くに達することもあったほどでしたが、結果的に900回転におさまったそうです。
パワーは315馬力程度でしたが、テストドライバーの加藤博義さんに乗ってもらったところダメ出し。「8000回転からの伸びがない」とのことで、吸気系を大幅に見直すことになりました。インテークマニホールドを400mmから260mmへと大幅に短くすると、上まで気持ちよく回るエンジンになりました。310馬力ほど出てしましたが、当時の自主規制地の280馬力で世に出ることになりました。
当時の901活動については「部署間のセクショナリズムがなくなり、非常にいい環境でした」と語る伊藤さん。技術に関する論争には職制など関係ない、というプリンス時代のDNAもそこにあったと言います。
「テストドライバーの声は神の声」と銘じ作られたGT-Rは、フォード・シエラから連勝の座を奪い、ユーザーの「ブランドに対する期待」に応えることの大事さにあらためて気づかされることとなりました。
最後に「日本車の生産規模が世界一だった時代に自動車開発ができて幸せです。いまでも愛され評価の高いR32スカイライン。愛好者の皆さまには感謝を申し上げたい」と結んでくれました。
(畑澤清志)