初戦、完走! 周囲の予想を見事に裏切り(!?)、世界耐久選手権・富士1000km耐久レースに参戦し、そこから得られるものをユーザーにフィードバックしたい…その強い信念のもとレースに挑戦した我がチームOPT。今までドライバーの声や各担当部署の状況などをプレイバックしました。今回その9では、ピットスタッフからの声をお届けしましょう。
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我れ、チューンドカーでかく戦えり
テクとマシンをたたき上げる最高の舞台、それがレースだ!
ストリートの意地とロマンを賭して、サーキットになぐり込んだOPT・Z。1000km、5時間48分の長丁場をいかに走りぬいたか!
今だから言える。ジャイアンツの奇跡の優勝はあっても、OPT・Zの完走はない! 誰もがそう思っていた。
ドピーカンとなった1985年5月5日。午前11時に1000kmの長丁場、227周の男のドラマが24台によって幕を切って落とされた。1stドライバーは山田英二。耐久性を考えて、6000rpmまでしか回さない作戦をとる。それでもストレートでは240km/hくらいは出るはずだ。
問題はコーナー。ストリートラジアルとスリックとの性能差は歴然。予選でCR-XそれもOHC、1.5Lに3秒差をつけられたのも、いってみればこのストリートラジアルとスリックの差みたいなもの。1コーナーでのブレーキの踏みも他車に比べてはるかに早い。ヘアピンなど、他車がビターッと張り付くようなコーナリングをしているのとは対照的に、ヨタヨタ。
1周めはそれでも1分51秒40と、意地と直線パワーでCR-Xを抜き、ケツから2番目で通過。まずまずの出足といえる、かな!?
その後も快調、1分53秒22、53秒03…と、山田はコンスタントにラップを重ねる。練習走行はおろか、予選でも細かいトラブルでほとんど走り込みなしのぶっつけ本番。いくら回転を6000rpmに設定してあるとはいえ、ピットは誰しも、口には出さないけれど不安いっぱい、祈るような面持ちでマシンを見守る。
30分、40分…ラップタイムは1分54~55秒台で安定している。毎ラップ、祈るように最終コーナーを見やっていたピットにも少しばかり余裕が生まれてくる。「6000rpmに抑えているんだぜ、壊れるわけがないヨ」、初めてDaiの強がりが出た。
ドライバー交代の予定は40周。「そろそろか…」そんな矢先の38周目、「ゼッケン56のチーム監督は本部まで来てください」とアナウンスが流れる。何事かと不安げに本部へ出頭したDai。クレームはZの走りについてだった。「ヘアピンでヨロヨロ走っているけど、ドライバーが未熟なのかね」
が、そこで恐れ入るDaiじゃない。「いや、市販ラジアルタイヤだからですよ!」と、きっぱり言い切ってやったと顔を紅潮気味にさせて帰ってくる。
40周。ドライバー交代。エンジン快調、水温、油圧、ブースト異常なし。タイヤもまったく問題なし! 2番手は小宮延雄だ、ラップタイムも1分55秒74と順調。
が、次の周、突然タイムが2分00秒10にダウン。アレッとばかりマシンを見ると、なんとフロントガラスがオイルと泥でベットリ。小宮は窓から横を見て走っている。それでも苦心のドライブで1分55秒台にまでのせてくる。ピットインしてクリーニングすれば、一気に1分以上のロスタイムだから必死の頑張りなのだが、さすがに59周めでいったんピットイン。
視界が戻ってからは1分53秒89、54秒00と確実にハイペースをマーク。