自動車業界の未来に思いを馳せていこうということで【週刊クルマのミライ】という連載タイトルを付けていますが、昔から「歴史は繰り返す」と申しますように、未来を予想するには過去を知っておくことは大切です。
そんなことを、2018年5月17日に発表されたホンダ・ジェイドのマイナーチェンジに感じさせられました。日本仕様は3列シート6人乗りのロールーフミニバンとしてデビューしたジェイドですが、2列シート5人乗り仕様が追加されたのです。
もともと海外仕様には2列シートが設定されていたので驚くことではありませんが、シルエットはそのままに脱ミニバンをしてステーションワゴン化したのです。もっともラインナップには3列シート仕様も残っていますからミニバンを捨てたわけではありません。
そして、こうしたラインナップの追加に驚かないのは、ホンダがこうした変身をさせるのは初めてではないから。実質的にジェイドのルーツといえるロールーフ(立体駐車場に入る1550mm以下の全高)ミニバンとして、かつて「ストリーム」というモデルがありました。
もともと5ナンバー(小型車サイズ)ボディに巧みなパッケージングで2+3+2レイアウトの3列シートを収めた7シーターミニバンとして生まれたストリームでしたが、2006年7月にデビューした2代目ストリームは、およそ3年後の2009年7月のマイナーチェンジにおいて2列シート仕様を追加設定しています。一方、ジェイドは2015年2月にハイブリッドパワートレインだけの設定として誕生しながら、同年5月には1.5リッターターボを積んだスポーティ仕様を追加。そして、2018年5月に2列シート仕様を新設定という経緯になっています。まさに歴史は繰り返すといったところでしょうか。
違いといえば、ストリームに2列シート仕様を追加したときにはスポーティグレード限定で、標準仕様に2列シートが追加されるには一年ほどの時間を要しました。しかし、今回のマイナーチェンジではジェイドのベーシックグレードとして1.5リッターターボの5人乗り仕様を設定しています。このあたり、過去の経験を活かしたということでしょうか。
もっとも、そのストリームにしても最終的には3列シート6人乗り仕様だけに整理されたのは歴史的な事実。果たして「歴史は繰り返す」のか、それともロールーフミニバンとしての使命を終え、後席使用時でもゴルフバッグ4個が搭載できるというラゲッジの広いステーションワゴンとしてのリボーンに成功するのか。それは「神のみぞ知る」のかもしれません。
新設された2列シート仕様の後席中央は、アームレストとドリンクホルダー&テーブルが内蔵されています。3列シート仕様でも主役といえるのは大きくスライドする2列目キャプテンシートですが、いずれにしても4人乗車で快適に移動できるツアラーというジェイドのキャラクターは不変といえそうです。
(山本晋也)