ヒット作のスケールダウンモデルは作らない! チーフデザイナーが語る、ボルボ・XC40の独自性とは?

2018年欧州カー・オブ・ザ・イヤーを受賞し、いよいよ日本市場へデビューとなったボルボ・XC40。3月28日の発表を受け、翌29日にボルボ・カー虎ノ門(港区)において、記念のデザイントークが開催されました。

講演したのはボルボ・カー・グループ、エクステリアデザイン・チーフデザイナーであるマクシミリアン・ミッソーニ氏。フォルクスワーゲングループでアウディなどを手掛けた後、2012年にボルボ・カー・グループに入社。現在は、すべてのボルボおよびポールスターのエクステリアデザインを総括します。

XC90以降の新世代シリーズを打ち出すに当たって氏が提示したのは、単に過去のデザインをモダンに再解釈するのではなく、まったく新しいテーマを作り上げること。歴史的な名車のリ・デザインは一種の流行ですが、それはボルボらしくないという判断です。

もうひとつ、仮に新しいデザインが成功した場合でも、それをスケールダウンさせてシリーズとする方法は避けること。それは、結局同じメッセージを繰り返すに過ぎず、デザインの現場では陥りがちな「罠」であると言い切ります。

これにより、新しい90シリーズはストレートなショルダーラインをはじめ、落ち着きと自信に満ちた佇まいを、60シリーズは前後ショルダー上にふたつのラインが強調され、スポーティでダイナミックな勢いを感じさせます。

そして、続くXC40は若々しさと同時によりプロダクト的なアプローチで、タフなロボットのような表現に。先の2車とは異なり縦のラインも強調され、とりわけ蹴り上がったリアピラーは、XC40が前席を重視したドライバーズカーであることを主張します。

氏は有名ファッションブランドを例に、同じブランドでもターゲットにより異なるイメージの商品を展開することに言及。それでも、クオリティ感などには共通の雰囲気を感じるのと同様、ボルボもフロントグリルを中心にファミリーとしての共通性は確保しているといいます。

さらに、P1800を筆頭にエレガントさを持つ60~70年代、ボクシーな80~90年代と、方向性は変わってもシンプルで機能を重視した基本スタンスは不変で、安易な情緒表現に走らなかったことが最近のボルボの好調さにつながっているといえそうです。

その最新作であるXC40は、ボンネットからベルトラインへの流れをはじめ、直線を多用した造形がクリーンで軽快。あたかも、マクシミリアン氏が在籍したフォルクスワーゲンの追求するシンプルさと、ボルボのよき伝統が巧妙にミックスされた表現に見えます。

すでにヒット作の声が大きいXC40ですが、一見して多くの共感を得るデザインは偶然の産物ではありません。新世代シリース最新作の表現として、もしこれが次のシリースにつながるテーマであれば、今後のボルボの展開は目が離せないと言えるでしょう。

(すぎもとたかよし)

この記事の著者

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すぎもと たかよし

東京都下の某大学に勤務する「サラリーマン自動車ライター」。大学では美術科で日本画を専攻、車も最初から興味を持ったのは中身よりもとにかくデザイン。自動車メディアではデザインの記事が少ない、じゃあ自分で書いてしまおうと、いつの間にかライターに。
現役サラリーマンとして、ユーザー目線のニュートラルな視点が身上。「デザインは好き嫌いの前に質の問題がある」がモットー。空いた時間は社会人バンドでドラムを叩き、そして美味しい珈琲を探して旅に。愛車は真っ赤ないすゞFFジェミニ・イルムシャー。
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