機体はインディアナポリスの優勝翌日にはカリフォルニアに移送、機体をバラしポルトガルで損傷したフレームの修復に入ったのですが、何度か試したものの補修と云うレベルでは完全には直らない事が判りました。
本格的な修理を行い、機体を良い(正常な)状態に戻す為にかなり時間を費やしたそうで、アブダビ戦を前にアップデートの予定が有りましたが、本格修理でスケジュールが一ヶ月ほど遅延した感じなので、開幕戦は大きな機体改修を行わなず(=最終戦迄の蓄積を元に)レースに臨むようです。
今後のアップデート予定としては、エンジンカウルの交換を予定しているとのこと。実はこちらも昨シーズン投入が検討されていた物ですが、ポルトでの機体トラブル対策に時間が割かれた結果、投入が見送られていたもの。
スクリーンに映しだされたシルエットは水平対向エンジンのシリンダーヘッド冷却用の空気取り入れ用ダクトとプロペラのシャフトの間を大きく抉られた様に見えます。前面投影面積は同じですが、より前方がより絞られたデザインとなるよう。
即投入とならないのは、絞り込まれる事で内側の空気の流れが変わるため、冷却系への影響を検証した後になる事と併せ、他チームへコピーされるのを避けるためとのこと。毎年平均1秒近くタイムが向上するため、「一歩立ち止まると、あっという間において行かれる」と室屋選手が語るように、他のモータースポーツと同様にエアレースでも技術開発競争が絶え間なく続けられています。
保留されているウイングレットの投入についても、「準備は進めているが、現在は非装着でも最速を誇っていた。ラウンドによっては、装着しない方が速い場合もあるため、様子を見ながら」と、投入の見通しがついたようです。また、オフシーズンの補修作業の際、見事な手際で協力したとの事で、テクニシャンがピーター・ゴーティエに交代しています。
今シーズン最大のルール変更であるオーバーGペナルティ(注)については「2年前は沢山引っ掛かっていたけど、引っ掛からないテクニックを随分編み出し『もう変えなくてもいいのになぁ』と思いましたが、失格からペナルティタイム加算への変更は実際勝負が決まったに等しいですし、お客さんには最後まで飛ぶ所を見せられるのでいいかな」と考えているそうです。
注:オーバーGペナルティは昨年まで10Gを「0.6秒以上超えると”失格」でしたが、2018年より10Gを「0.6秒以上超えると”2秒加算”」となります。なお「12Gを超えると即時失格」ルールについては変更はありません。
新シーズンへの抱負は「新チームも入ってきますので、アブダビで蓋を開けて…が楽しみで1から取り組みますが、去年の(タイトルを争った)経験は生きてくると思うので他のチームより有利かなと思います」「エアレースは自分への挑戦だったり、チームでの限界へのチャレンジというところで連覇を目指します。」
また、エアショーは「全国各地で見てもらって、子供たちに将来パイロットや航空業界を志望してもらえる動機になればいいなと思って行っています。」と、エアレース以外の活動についても抱負を語りました。
今週いよいよアブダビでの開幕戦。各チームが現地に入り、週末のレース準備を始めています。室屋機はカラーリングにも大きな変更はありませんが、各チームの機体はロゴだけ変更されたチームから、大胆なカラーリング変更を行ったチームも目立ちます。
初参加となるベン・マーフィー選手の機体EDGE540V2は2017シーズンをもって引退したピーター・ポドルンシェク選手の機体を引き継ぎましたがカラーリングは一変しました。…下向きウイングレットは健在です。
ミカ・ブラジョー選手のMXS-Rは昨年のレトロ戦闘機風から、黒+クロームメッキ風に変わりました。
マット・ホール、クリスチャン・ボルトン選手のカラーリングも大きく変わったようです。
いよいよ、2018シーズンが始まります。開幕戦アブダビのTV放送は決勝日(2/3)の日本時間深夜に行われるようです。今年からWeb中継はDAZNによる独占中継となりました。一方で、アンドロイド携帯・DayDream機能対応スマホによるVR観戦という視聴方法も始まります。チャンピオン室屋選手の開幕ダッシュに期待です。
(川崎BASE photo:Y.Kanoh/Joerg Mitter/Predrag Vuckovic/Red Bull Content Pool)