80〜90年代の日本車からグッドデザインを振り返るシリーズ。第27回は、世界一の走りと10年間色あせない美しさを目標に掲げた、日本屈指のスポーツカーに太鼓判です。
901運動を筆頭に、日産の志気が上がる1989年。飛び抜けた先進性と絶対のオリジナリティを引っ提げ、90年代世界一のスポーツカーを目指して登場したのが4代目のフェアレディZです。
キャビンフォワードにより極めて短いオーバーハングを得たボディは、2シーターと2by2で大きな差を感じさせないキレのよさが身上。
左右を大きく絞り込んだフロントは、内側に寄せたフロントランプが精悍さを表現。素材色を巧みに用いて厚みを持たせたバンパーは、低いフロントを華奢に見せないボリューム感を発揮します。
リフレクションが美しいサイド面は、弓形のサイドウインドウがリズム感を生み、それに続くテールゲートとリアに向けて駆け上がるサイドシルの太いラインが、ボディにアクセントを与えます。
一方、リアは広いブラック面に独自のボディ断面(コーンシェイプ)をモチーフとする楕円型のランプを配置。先進感とともに、後ろ姿をしっかり引き締めます。
インテリアは、シート素材をドアトリムに加えインパネ下部にも回し、高い質感を獲得。流れるような連続感を持たせたコンソールは、同時期のスカイラインやシルビアに準じ、抜きん出た先進性を表現します。
前澤義雄、園勲夫氏らデザインチームは、安易に初代のモチーフを使うことはせず、古典ではない、まったく新しいオリジナリティを模索。これを貫けば、Zらしさは自然に醸し出されると確信しました。
開発リーダーに明快な意図と狙いがあり、そこに志の高いデザインチームが加わったとき、ユーザーの想像と期待を越えたクルマが生まれる。当然のこととはいえ、実は稀な出逢いがここにあったのかもしれません。
●主要諸元 日産 フェアレディZ 2シーター 300ZXツインターボ(5MT)
形式 E-CZ32
全長4310mm×全幅1790mm×全高1250mm(Tバールーフ)
車両重量 1520kg
ホイールベース 2450mm
エンジン 2960cc V型6気筒DOHC24バルブ ツインターボ
出力 280ps/6400rpm 39.6kg-m/3600rpm
(すぎもと たかよし)