さきほど、「燃焼の切り替えがほとんどわからない」と表現しましたが、わかるタイミングもあります。それはもっとも効率よく自己着火燃焼している状態への切り替わりです。
運転しているとたまに“タッタッタッタッタ”という打音が伝わってくることがあります。聞けばこの音はもっとも効率よく自己着火燃焼している状態のときに発生する音だということでした。つまりノッキングに近い状態での起きている燃焼時の音なのですが、ガソリンエンジンの“カリカリカリ”というような不快さはありませんでした。
一定の速度で走ってるときのトルクの安定感は高いものでした。トルクが高めでフラットなので高めのギヤが使えます。ですから、アクセルペダルの微妙な踏み込み加減に対するクルマの挙動変化が少なく、快適なクルージングが可能になります。そうした高めのギヤで走っている状態からアクセルペダルを踏み込んだときも、トルクバンドが広いので力強い加速が得られます。
さらにシフトダウンしてからアクセルを踏み込めば、6000回転付近まで一気に吹け上げるいかにもガソリンエンジンらしい抜けのいい加速感を楽しむことができます。この低速トルクの厚さと、抜けのいい吹け上がり感が共存するところが、ディーゼルエンジンとガソリンエンジンのいいとこ取りという印象を強めているわけです。
高圧縮のセッティングとなっている「SKYACTIV-X」ですが、アクセルペダルを戻した際のエンジンブレーキの効きはあまり強さを感じませんでした。聞けば、減速系はまだチューニングが行われていないということでした。この減速系については、回生エネルギーを利用するi-ELOOPやマイルドハイブリッドとの組み合わせも考えられていて、今後マッチングが図られていくとのことでした。
画期的な発想によって生まれた「SKYACTIV-X」は、実用化間近まで来ています。おそらく、このエンジンは次期アクセラあたりに搭載されることになり、そのときにはさらに洗練されたものとなっているでしょう。まだまだ内燃機関には未来があると感じられる試乗となりました。
(諸星陽一)
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