ランボルギーニ。幼少の頃スーパーカーブームを経験した我々世代にはなんとも特別な響きです。カウンタックのあの独特の跳ね上がるドアやパカッと開くヘッドライトに魅了される小学生でした。
フェラーリ512BB(ベルリネッタ・ボクサーと読まないとバカにされた)の最高速度が302km/hなのに対し、ランボルギーニ・カウンタックLP400の最高速度が300km/hと知った時は「チキショー、負けた。フェラーリずるいぞ!」とオーナーでも関係者でもなんでもないのに勝手に悔しい思いをしながら……将来、どんな大人になればランボルギーニが買えるんだろう?と1〜2年は思い続けながら、だんだんと普通のおじさんへと成長していった私です。
そんな普通のおじさんが、仕事の都合でランボルギーニに乗る機会に恵まれました。40年の年月を経て、ついにその時は訪れたのです。
試乗会の案内をいただき、普通ならサーキット走行やスーパーカーに乗り慣れた「モータージャーナリスト」とか「レーサーもしくはレース経験者」を対象としているんだろうと薄々感じながらも、シレーッと「自分が乗ります」と出席の返事を出してしまったのです。正直、当日まで「う〜ん、直前にお腹痛くなった、ということにしてもいいかなぁ」と参加への緊張が続きました。
そんな緊張の舞台はみなさんご存知の富士スピードウェイ。初体験ではありませんが、本コースのほうはそうそう走ることはありません。まして、本気でスピードが出る車両では初めてのことです。
まずはランボルギーニ・アヴェンタドールSに乗ります。
アヴェンタドールSは、スーパーカーの象徴!とも言えるV12エンジンを搭載したランボルギーニのフラッグシップモデルです。
4輪駆動の他に、サスペンション制御、4輪ステアリングなども搭載した電子制御の要塞のようなクルマです。
そのV12エンジンの最大出力はなんと740HP! 私が運転したことのあるクルマで間違いなく最高にハイパワーです。0-100km加速はたったの2.9秒!! 三つ数える前に日本の公道の最高速度に達してしまうのですよ。そして、我々世代がこだわりたいその最高速度は何キロだと思いますか? ななな、なんと350km/hです!!! 新幹線のぞみの300km/hより、フランスのTGVの320km/hよりもはるかに速いんです。こりゃ、スペックを聞いただけでビビりますよ。
そんな気持ちをヘルメットの中の顔から周りの人に悟られないよう注意しながら、ドアを跳ね上げ車内へと入っていきましょう。
普通みなさんはクルマに乗る時どっから入ります? 足から? お尻から? サイドシルが幅広くドア前方の開口部には、ドア下端が被ってくるアヴェンタドールにはどう乗り込んでいいのか迷います。
いったんサイドシルとシートの端っこくらいに腰を下ろし、足を入れながらお尻をずらしてシートに収まります。お約束の低いルーフに頭をぶつけながら。
エンジンスタートはセンターコンソールの赤いカバーを上に持ち上げてスタータースイッチを押します。「フワォン」という感じで猛牛が目覚めます。
ブレーキを踏んだままステアリングの向こうの右パドルスイッチを手前に引いて1速に入れます。コンソールの電気式パーキングブレーキを下げれば準備OK。