「モエルゥ」なアシに萌えられる ニューC3は正統派シトロエンだった!【CITROËN C3試乗】

今夏、日本にようやく上陸するシトロエンのニューC3に、フランス本国で1200㎞超ほど乗ってくることができた。

いきなり脱線気味で恐縮だが、よくスイーツの世界で「モエルー・ショコラ」といったら、中味がとろりと流れ出すチョコレート焼き菓子のこと。よってフランス語の「moelleux(モエルゥと発音)」は「やわらかい」と訳されがちだが、カタカナで聞くと、いつも何か違う!?的な違和感があった。

というのも、パンケーキやスクランブルエッグやスムージーなどがひたすら「ゆるフワ」な様子は、むしろ「aéré(アエレ、エアが入ったの意)」とか「mou(ムゥ、ゆるいの意)」と、かの地では形容される。「モエルゥ」は、カリッと焼き上がった固い部分から始まって、トロけるほどの柔らかさに至るのが前提というか、独特のシズル感があるのだ。

それは、口の中を切っちゃうほど皮は固いが中味はしなやかなバゲット然り。表の薄皮だけカリカリで、中の層がジワリと弾むようなクロワッサン然り。噛めば噛むほど肉汁の溢れる分厚いステーキ然り。旨味とは、剛から柔へ、無限の諧調テクスチャ―の中にこそ潜んでいる・・・・そんなニュアンスなのだ。

前置きが長くなったが、シトロエンのニューC3の足回りは、まさしく「モエルゥ」と呼ぶにふさわしい出来映えだった。ハイドロプニューマチックという油圧と空気で減衰力を制御する仕組みを廃した時、シトロエンのエンジニアは、もはや金属バネでもハイドロの乗り味は再現できる、そう述べていた。聞いた時はマユツバに思っていたものの、C4がマイナーチェンジされた時は、確かにもっとも近い実現例だと唸らされた。