「モエルゥ」なアシに萌えられる ニューC3は正統派シトロエンだった!【CITROËN C3試乗】

いまだプラットフォームはプジョー207や旧C3から受け継がれた、PSAのプラットフォーム1で、前席シート下、横方向に補強メンバーが入ったという。お世辞にも新しいプラットフォームではないが、段差を超える際のマナーの穏やかさ、静粛性の高さ、乗り心地のフラットさは、Bセグ・コンパクト離れしている。それは高速道路でも変わらず、長距離を難なく、飲み込むようにこなしてしまう。

得意は90㎞/h制限の下道だ。フランスの路面もけっこう荒れていたりツギハギ舗装の凸凹が少なくないのだが、C3は波間をボートが切っていくように、しなやかに路面を捉えて進んでいく。ステアリングの中立付近はむしろ遊びが多いと感じるのに、速度が増すほどに座りがよくなる感覚だ。ロール量は少なくないが、粘る領域に当たるのも早く、予想できる動きだから怖さを感じない。積極的に走らせるもよし、のんびり構えて流すもよし、そういう懐の深いロードホールディングだ。

ただしC3の弱点を強いて挙げれば、フランスの高速道路の130㎞/h制限で巡航していると6速3000rpm弱、平均燃費がリッター15㎞強と、下道でも負荷のかかる走り方をしていたとはいえ、あまり伸びなかったことだ。乗員が2人、3人と増えれば、さらに悪化する可能性もある。とはいえ110km/h巡航では2600rpm程度だったので、速度域が低い日本の道路事情ではもっと伸びるだろう。

ちなみに距離をついつい伸ばしたくなる仕掛けは、走る・止まる・曲がるだけではない。バックミラー一体で修められたドライブレコーダーには、Wifiとアプリを経由して、フロントスクリーンの先に広がる景色を、SNSにすぐアップできる「コネクティッド・カム」が備わっている。

車窓に広がるキレイな景色は従来、ドライバーならカメラを出すこともできないし、停めるにも安全確認が必要で、なかなかモノにできるものではなかった。それがほぼ自動的に記録できるようになったことで、景色のいい場所へと寄り道をしたくなる。

そう、寄り道がしたくなる実用ハッチバックであること。それこそがニューC3の強烈な存在理由なのだ。

(NANYO Kazuhiro)