飯田裕子がレクサスLSのアドバンストドライブ初体験。大型車との間をちょっと空けるキメ細やかさに感動!

■レベル2でもまだまだやることはある!

●レクサスLS、トヨタMIRAIに搭載する高度運転支援技術「Advanced Drive(アドバンスト・ドライブ)」

飯田裕子さんがトヨタ・アドバンスト・ドライブを体験
アドバンストドライブはトヨタMIRAIとレクサスLS500hに搭載可能です。

レクサスはLSに、そしてトヨタはMIRAIに、高度運転支援技術「Advanced Drive(アドバンスト・ドライブ)」を初搭載しました。

トヨタ自動車は交通事故死傷者ゼロを究極の目標とし、すべての人の自由な移動を実現するべく、安全・自動運転技術の開発を進めています。ときにクルマに操縦を任せられるのはありがたい。しかしクルマがドライバーから運転を奪うのではなく、人とクルマが仲間のように共に走るという「Driver Teammate Concept」の考え方に基づき、最新のシステムを搭載し、新しい共走のカタチが新たに生まれている、いえ、生まれたところと言うほうがよさそうです。

トヨタは高度なレベル2の技術を搭載。世界のトヨタ、自動運転でもレベル3を世界初でやりたかったのではないかと思いきや、世界で1000万台を売るトヨタは、グローバルでユーザーを見据えた「レベル2でもまだまだやれることはある」(試乗に同乗してくれた開発者の方の言葉)の領域の洗練に今は先ず力を注いでいるようです。

トヨタのこだわりポイントは、信頼性の高い目配り気配りの効いた知的かつ細やかな支援技術、そしてドライバーとクルマとの対話、さらにソフトウエアのアップデートにあります。

●カメラ、ミリ波レーダーに加えて高価なLiDARも

飯田裕子さんがトヨタアドバンストドライブを体験
アドバンストドライブが搭載されたレクサスLS500h。

今回は予めナビゲーションに設定された目的地に向かいながら、レクサスLSでAdvanced Driveの初体験をしました。レクサスは、LSのなかでもハイブリッド車のLS500hに搭載モデルを用意しています。

飯田裕子さんがトヨタアドバンストドライブを体験
フロントグリルのレーダー。
飯田裕子さんがトヨタアドバンストドライブを体験
カメラはステレオと望遠を装備。

Advanced Driveの機能は、高速道路や自動車専用道路の本線上での支援をするシステム。レクサスとしてはこれまでの運転支援技術“Lexus Safety System +A”の延長にある運転支援技術として、『レクサス アドバンスト・ドライブ』を位置づけています。

車両にはカメラ、ミリ波レーダーに加えてLiDAR(ライダー。レーザー光を使ったセンサー)を搭載。これでクルマの周囲360度を監視してくれます。ちなみに、今回のシステムには前方のLiDAR(高額!)と2つの単眼カメラ(前方の路面を見るカメラ、遠くを見るカメラ)を追加。さらに高速道路上で自車位置の制御精度をより向上させる高精度マップも搭載しています。

●ビターっと一定で走る安定感がマシマシ!

飯田裕子さんがトヨタアドバンストドライブを体験
操作はステアリングのスポーク部分で行います。
飯田裕子さんがトヨタアドバンストドライブを体験
条件が整うとインパネに「Advanced Drive Ready」の表示が。

高度運転支援技術『Advanced Drive』の搭載によって、高速道路を走行中、アクセルやブレーキに加えハンドル操作からも解放される移動が可能になりました。目的地をセットした際はジャンクションの分岐や車線変更、また追い越しなどをシステムが可能と判断した場合、自動的に車線変更を行ってくれます。

飯田裕子さんがトヨタアドバンスト・ドライブを体験
システム体験中の飯田裕子さん

ステアリング右下のボタンで『Advanced Drive』をオン。やがてメーターの画面がブルーに切り替わると、アクセルやブレーキに加え、今回から新たにステアリング操作も車両が行ってくれるハンズオフが可能になります。

Advanced=より先進的な技術を搭載したLSは、システムを作動させた状態の走行安定性が一段と向上したことが最初にうかがえました。走行安定性とは車線内を走行する際にわずかな蛇行のような動きも消え、ピターッと一定で走る安定感が増しているのです。

コーナーでは状況によりドライバーにハンドル操作を戻す場合もありますが、それ以外の多くの場面でのライントレース性も直進走行と変わらぬ信頼性の高さに特にロングドライブでは安心感とともにこれは楽そうだなぁと思った次第です。

既存のLexus Safety System +Aでもコーナーの手前で自動的に減速を行うものの、ナビ用の地図の精度で行っていたのでやはり遅れや支援の限界がありました。それが今回は、より自車位置がレーン単位の細かな形状までわかる高精度地図や自車位置を認識するカメラやセンサーの採用により、さらに理に適った減速とコーナリングぶりがレベルアップ。これが条件さえ整えばハンズオフの状態でも可能になったわけです。

●大型車と並ぶと車間を空ける配慮も!

飯田裕子さんがトヨタアドバンストドライブを体験
道路状況に応じた、よりジェントルできめ細かい運転制御を実現しています。

レクサス車らしいと言いたい自動運転マナーの良さも感じられます。ジャンクションで車線変更を行うときに“安心と快適な量(これが絶妙!制御技術の高さがうかがえる)”の減速をさり気なく行い、スーっと滑らかに移動。こういうレーンチェンジは気持ちいいなぁと思いました。

聞けば、トヨタ自動車の社内の模範ドライバーのデータを貯めていて、どんな制御が良いかを決めていったのだとか。「これが自動車会社の強みではないでしょうか」と同乗開発者の方。

飯田裕子さんがトヨタアドバンストドライブを体験
車両がどう動くのかを細かく表示します。

そんな減速動作は本線に合流してくる車両に対しても細やかな配慮をしてくれます。これも今回の特徴的なサポートの一つ。このとき人間の運転でもちょっとアクセルを緩めるとかブレーキで減速をしてスムーズな合流を促しますが、LSも実にジェントル。前車との車間距離を確保するための速度調節時にも自然な感覚で行ってくれます。

目の前で起こるそれらに場当たり的な制御で対応することが多く、やや急な制御で対応するのが現状では少なくありません。そういう意味で『Advanced Drive』は、よりアドバンストでインテリジェンスな支援が可能になっているのは間違いなし。

さらに「こんな細かいことまで…。でも、ある、ある!」と強く共感を抱いたのが、周囲のクルマとの前後のみならず、横を走る車への配慮でした。

走行レーン内を走行中、隣の大型車両と併走や追い越しをするような場面で、LSは走行車線内でちょっと避けて走ることもしてくれるようになりました。日頃、ドライバーが運転中の安心感を保つためにしているような無意識にも近い操作にも目を向けた支援。タイヤ半分~一本分くらいだそうですが、実に嬉しいし頼もしい。

トヨタ自動車が高度運転支援=「レベル2の段階でもまだまだやれることがある」という“やれること”の一つとして紹介していたこの制御。実際にそれを体験してみてこれは“高度キメ細やか運転支援”だなぁ、とニンマリ。

●システム作動中でもドライバーが運転に参加できる

飯田裕子さんがトヨタアドバンストドライブを体験
ステアリングコラムの上にあるセンサーでドライバーをモニタリングします。

ドライバーとのインタラクティブな対話。それはコミュニケーションが比較的“密”であるのがこの技術の特徴でした。丁寧なお知らせと、システム作動中でもドライバーが運転に参加する意識、そのための対話、これが特徴として印象に残ります。

たとえば、一般道から高速に向かう途中も「あと何キロで『Advanced Drive』が使用可能ですよ」という表示してくれたり、高速走行中もルート上のジャンクションなどまでの距離と、「オート(システムの支援)でいけるか、ドライバーによるマニュアル操作が必要か」を予め表示しておいてくれたりもします。

これまでもナビシステムが「分岐を左方向です」的なアナウンスをしてくれますが、新たに運転支援の可能かどうかを地図や交通状況をふまえ予測をしつつサポートをしてくれます。

ドライバーの運転への参加。これもトヨタの『Advanced Drive』の特徴とも言えるでしょう。車線変更の際、車両が自動的にウインカーを点灯しますが、車線変更はシステム上でハンズオフの状態であっても車線変更時だけはドライバーがステアリングを握り、さらに安全確認を“目視”で行う必要があります。

●情報量が過多かなと思える場面も……

飯田裕子さんがトヨタアドバンストドライブを体験
LS500hのコクピット回り。

実際の車線変更はクルマがハンドル操作(タイヤの向きを変える)を行うものの、ドライバーがハンドルに手を触れていること、そして車載のモニターカメラが“ドライバーが“目視”で安全確認を行ったこと“を認識しないと、システムによる車線変更は行えません。「車線変更はハンドルを持って安全確認」。

これはドライバーにも運転行動に参加してほしいという“チームメイトコンセプト=人とクルマが協調しあいながら運転を実現していく”という考え方に基づくものなのだそうです。ある意味、象徴的な操作と言えるかもしれません。

そんなこともあり、このシステムは色々なことをドライバーに提案&報告してくれます。車両が行うことをドライバーに伝えるシーンは既存システムでもありますが、さらに様々な支援を車側が行う際に“はい/いいえ”で答える(ボタン操作)シーン、運転操作を促すシーン…など、一般的なクルマを運転しているとき以上にクルマとの対話が確かに多く感じました。

飯田裕子さんがトヨタアドバンストドライブを体験
ドアミラー下部にもセンサーが。
飯田裕子さんがトヨタアドバンストドライブを体験
リアバンパー下部のセンサー。

今回はとくに都市部の首都高を含む高速テストドライブだったせいもあるからか、そんなコミュニケーション(対話)も頻発、操作が忙しいと思ってしまいました。車側からの提案や問い合せがあれば、それに対しドライバー(人間)は具体的なリアクションを行う前に判断や認知が必要になります。慣れもあるのかもしれないし、渋滞中のような低速走行中であれば、前述のようなクルマとのコミュニケーションを行う上でハンズオフドライブを安心して行えるのかもしれません。

が、今回の体験では人とクルマの協調は素直に素晴らしいと思う一方で、情報量も含め全てが必要なのかしら……と、少し気になるところでもありました。が、これらは今後、洗練されているのではないかと想像できます。

●レベルの議論ではなくお客様が喜ぶ技術を

飯田裕子さんがトヨタアドバンストドライブを体験
チームメイトコンセプトに共感できたという飯田裕子さん。

ではレクサスがLSでスタートしたこの技術を今後普及させるためには? 実はLSに搭載されている『Advanced Drive』のセンサー類は、この先のレベル(タスクの意味)アップを狙っておごったものを搭載しているとのこと。その分、これからできることも可能性としては多いけれど、普及を考えるなら機能をより現実的なものに絞りつつ実現していくための取捨選択も必要だと言います。技術レベルの向上と普及への期待は大いにしたいところです。

またこのシステムは電力消費量も多いそうで、今の状態では電動車をベースにしたものでないと電力的に厳しいのだとか。それもあって機能を整理してスリム化し、一般のエンジン車にも搭載できるような機能の選択とコスト抑制をしていかなければならないとのこと。

ちなみにトヨタ自動車としては、ITSコネクトを活用した車両同士が繋がるシステムも構築中とのこと。

このレクサスLSのアドバンスト・ドライブは進化の途中で、実はフロントフェンダーの後ろよりのところに意味深なスポットがあり、ここに必要なタイミング(もうそのタイミングが来ることは明らか)で今後さらにLiDARが装着される予定だそうです。このようにハードのアップデートの準備も進むなか、ソフトウエアなどのアップデートなどはOTA(Over-The-Air)=通信で行うシステムを初採用。これも新しい。

「自動運転レベルの議論が重要なのではなく、お客様が一番嬉しい、利便を感じる技術を人とクルマとで高め合い、仲間同士のような関係を築き、共に走る」というチームメイトコンセプト。今回、「レベル2でもできることはまだまだある」は確かに理解も共感もできました。

トヨタ/レクサスの高度運転支援技術はもちろん、“高度キメ細やか運転支援”の技術向上にも注目していきたいトヨタ『Advanced Drive』でした。

(文:飯田裕子/写真・動画:前田惠介)