2001年6月、V35スカイラインは4ドアセダンでデビューしました。新開発のFMパッケージをベースに、V6・NAエンジンとAT、4輪マルチリンクサスを採用。エンジンは215psの2.5Lと260psの3Lを搭載し、NAエンジンと前後重量バランス【52:48】がもたらすナチュラルで爽快なハンドリング、そして快適でゆとりあるキャビンを実現しました。
更に約1年半後には2ドアクーペを追加し、280psの3.5Lを搭載するとともに6MTも設定してスポーツ性を訴求。またセダンにもNA3.5Lを採用するだけでなく、独自技術のエクストロイドCVTや6MTを組合せ、新たな走りを提案しました。
しかしながらV35スカイラインに対するスカイラインファンの反応は、非常に冷やかなものでした。
スカイラインの評価軸が、ターボパワーや高剛性ボディといったスポーツ性能中心になっていた上に、ファンがこだわってきた直6ターボやリア丸目4灯等の「らしさ」が何も引き継がれていなかったからです(後から登場した2ドアクーペと4ドアセダンのマイナーチェンジ時に、リア丸目4灯を採用。)。
振り返ると当時の日産は、理想の次世代FRミドルセダンとして新開発したクルマに対し、あえて「スカイライン」と命名しました。それはゴーン社長(当時)が、GT-RやフェアレディZと同様に、10代も続いてきたスカイラインをリスペクトしていたからであり、新開発セダンとスカイラインあるべき姿が重なったのだと思います。
実際V35スカイラインは、街中では広いキャビンで運転しやすく、高速ではロングクルージングも快適、また山坂道ではドライバーを軸にしてコーナーを旋回するバランス性能を備えており、派手な飛び道具はありませんでしたが、ミドルセダンとしての総合的なポテンシャルは非常に高いものがありました。
しかし多くのスカイラインファンは、バブル崩壊の暗さを払拭するスポーティなデザインと運動性能、独自メカと相応の居住性、そして不景気でも購入維持できる庶民の味方的なリーズナブルさを期待していたと思います。
そのためV35スカイラインが、税金の高い贅沢エンジンを搭載した「スカイラインらしさ」の無い「お上品なクルマ」に映ってしまったのは、大変残念なところでした。
その後「FMパッケージ」は、特に米国市場のインフィニティブランドにおいて、FRの戦略的プラットフォームとして大きく成長し、Vシリーズのスカイラインにも大きな影響を与えていくことになります。
(星崎 俊浩)
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