「おおっ!手に汗握る展開だ!」室屋選手が千葉戦をレビュー【レッドブル・エアレース2017】

ミカ(ミカエル)・ブラジョー選手からは個別インタビューの時間が頂けました。

ミカ選手はフランス出身、1987年生まれの29歳。子供の頃からパイロットを目指し、12歳からトレーニングを開始。現在までの飛行時間は3000時間を超え、エアラインパイロットやフライトインストラクターと並行してアエロバティック(アクロバット飛行)の経験を磨きました。

エアレースでは2015年にマスタークラスへの登竜門「チャレンジャークラス」で優勝。しかし、翌年すぐにマスタークラスへ参戦せず、マスターメントリング(育成プログラム)に参加します。

飛行機の操縦だけでなくチーム運営などエアレースに参戦に必要な基礎を習得し、今年からマスタークラスへ 昨年までナイジェル・ラム選手をサポートしたブライトリングチームから参戦を開始しました。

Q:千葉戦お疲れさまでした。結果(ラウンド・オブ・14で敗退)は残念でしたが、対戦相手が現在最も速いマルティン・ソンカ選手だったので仕方ないという感じでしょうか?

ミカエル・ブラジョー(以下MB):千葉のトラックを飛ぶ事を楽しみに準備してきました。非常に良いコンディションの中、ペナルティのない飛行もできたのですが、相手の選手も速かったという事と、マスタークラスに参加して3度目のレースでしたので、チーム全体で細かい所まで戦略を組み立てている段階で、次戦はより効率の良い飛行をしていきたいと思います。

……明快な一方で、社交辞令的なお答えです。しかし、単独インタビューなので、踏み込みます。実はミカ選手、昨年の千葉では競技には参加していませんが、ナイジェル・ラム選手の機体で飛んでいます。 マスターメントリングプログラムによりミカ選手の飛行時間が設けられていました。

Q:昨年と今年のコース(タイムは今年の方が10秒速い)のどちらが難しかったですか?

MB:確かに昨年千葉のコースを飛びました。しかし、習熟プログラムと競技として飛ぶのは全く違います。 昨年はそこまで丁寧な分析は行っておらす、ナイジェル選手用のセットアップがされた機体での飛行でした。今年はチームとコースを充分分析して飛びましたので、16年の方が私には難しく感じました。

今年準備が整った状態で飛び・手応えもありましたが、細かな調整を煮詰めなくてはいけないと感じています。昨年は競技ではない事でリラックスして飛べた反面、(プログラムとして)チェックしている方々もいるので 気は引き締めて飛んでいました。

……昨年はただ飛んでいたわけではなく、評価を意識しながらの飛行はプレッシャー掛かったでしょうね。

Q:ミカ選手はこの2年間にデビューした選手(ポドルンシェク/コプシュテイン/ボルトン)達とチャレンジャークラス で競い合って(倒して)来ました。1年間プログラムを受けている間にデビューしたチャレンジャークラスのライバル達が参入し、ここ1,2戦で表彰台に登る結果を出していますが、どう思われていますか?

MB:このプログラムは、飛行技術だけでなく、チームの運営やエアレースを深く学んだ一年でした。 一緒に旅をしながらエアレースを構成する様々な側面を吸収したり、ブライトリングのアエロバティックチームとして飛行を披露したり忙しく過ごしました。レースに勝つ事だけに集中している一年ではなかった訳です。

レースに集中してれば早く好成績に近づけたかもしれませんが、1年間プログラムを通して勉強させてもらえた事で、確かな実力の土台が築けたと思えるし、これから順調に成績を伸ばしていける自信となりました。

……参戦開始から、3戦のうち2戦はドルダラー/ソンカ選手らの今シーズン好調な選手と多く対戦する不運もあったようです。 参戦初年度に無得点だった選手もいた事を考えれば、3戦で4ポイントを獲得しているのはルーキーとしては好調な滑り出しと見るべきなのかもしれません。

Q:ここ1,2年でエアレース黎明期を支えた選手(ベネゼイ,ボノム,アルヒ,ラム選手)が去り、現在は2009年デビュー のドルダラー・ホール・室屋の各選手、10年デビューのソンカ選手がタイトル争いの中心に居ます。2015,16年にマスタークラスにデビューしたあなた方がタイトル争いに参加出来るのはいつ頃でしょう?

MB:近年、飛行機の性能が向上・拮抗しており、千葉戦ではトップから2秒以内にほぼ全選手が収まって います。それは各選手が非常に細かいレベルでしのぎを削る戦いとなっている証拠です。そんな中、ポドルンシェク 選手がサンディエゴで、千葉でコプシュテイン選手が2位となりました。私も彼らの流れを追いたいと思い ます。なので、いつ彼らと共に表彰台を争えるかといえば、早ければ今年・来年には来るかもしれません。観客の方々の為にも表彰台のメンバーは毎回違う方がレースとしても面白い筈ですので。

Q:室屋選手も今年注目の選手としてミカ選手を挙げていました。これからどんどん上位を追い上げ、シリーズを盛り上げてくれることを期待しています。

MB:エアレースは僅差でエキサイティングなレースとなって来ており、これからも面白いレースが繰り広げられると思います。今年もあと五大会ありますので、出来るだけ多くのポイントを獲得できる飛行をしたいと思っています。

トップから最下位まで僅差なので、いかに正確で速いフライトをするかを目指しており、ポイントをより多く獲得できれば、さらなる限界に挑戦していけると思います。 とはいえ、現在のところまだ4ポイントなので、リスクマネージメントとして(ギャンブルに出ない)精神的なコントロールに取り組んでいます。

チームの戦略としては、目標のレベル(表彰台を狙う)に到達するよう、ゆっくりとではあり ますが、確実に近づいていると思います。なので、表彰台の獲得はそう遠くない未来に実現できると思っています。

インタビューの大半はミカ選手のコメントで占められるほど、熱い人柄が伝わるひと時でした。一機になってしまったMSX-Rの事なども伺ってみたかったのですが、ミカ選手の方からまたお会いしましょうとの事でしたので、何時の日か次の機会にまた伺ってみたいと思います。

(川崎BASE・photo Y.Kanoh)