燃費志向のクルマということを忘れさせるドライバビリティ【MINI クロスオーバーPHEV 試乗】

ここで発電するのはエンジンの補機類として付けられた発電機だ。通常のオルタネータの代わりになる大容量オルタネータは、エンジンの再始動のときにもベルトを介してクランクシャフトを回すから振動のないエンジンスタートが可能だ。

またこの大容量オルタネータを必要に応じて駆動力としても使うこともある。タイトなコーナーが多いワインディングロードを走っていて気がついたことだが、アクセルペダルを踏み始めてターボエンジンがトルクを出す前に駆動力を感じるのはこの大容量オルタネータがいち早く駆動力を発揮することだ。

実はアクセルペダルを強く踏み込むと最終的には前輪のエンジン駆動+後輪のモーター駆動によるAWDで走るのだが、インパネに出てくる表示でまだモーター駆動が始まる前、エンジンのターボによるトルクが盛り上がる前から駆動力を感じるのだ。

つまり1エンジン、2モーターによる3つのパワーソースによる駆動が可能なのだ。そして電気モーターのレスポンスの良さが、このクルマのドライバビリティをアップさせている。

このようにアクセルペダルに素直な反応をするから、PHEVというなんとなく走りを期待できないクルマというイメージとは裏腹に、よりゴーカートフィーリングを味わえるところが魅力になる。タイトコーナーの立ち上がりでアクセルペダルを強く踏み込んでもアンダーステアは弱いままで、あまり外に膨らまないから楽しく走れる。

市街地走行では、発進はまず後輪の電気モーターが駆動する。クルマが動き始めてからエンジンが始動する。しばらく、といっても短い時間だがAWDで走る。その後にエンジン駆動だけになる。発進は滑らかで、途中のエンジン再始動も滑らか、モーター駆動が終わってエンジンだけになるときもスムースに移行していく。

高速道路ではほとんどエンジンのみで走っている印象だった。「eパワー」にすると125km/hまで電気で走れるが、アクセルペダルを深く踏み込むとエンジンがかかり、「オートeドライブ」に戻ってしまう。

車室内の広さはノーマルのクロスオーバーと差は小さい。細かく見れば後席のヒップポイントが若干高くなっていたり、ラッゲージルームの床位置がほんの少し高くなった程度だ。実用上の差は感じないだろう。

ドライバーシートは座りやすい。腰をうまくおさえてくれて、クッション部、バックレスト部ともに身体にフィットする。クッションはやや硬めではあるが、悪くは感じない。

これはサスペンションとも共通する部分だ。乗り心地としてはやや硬めながら、凹凸に対しても角は丸く、サスペンションの動きがしなやかで良い感じだ。スペインの山の中の道はところどころ悪いところもあるが、そんな場所の通過も苦にならない。凹凸を通過しても揺すられる感じがなく、フラットな乗り味である。これはリヤにバッテリーとモーターを搭載しているから、重量が増したメリットかもしれない。

計器盤にはタコメータはない。その替わりにパワーとチャージを示すメーターがある。この辺りでやっと燃費志向のクルマだということを思い出させてくれる。黙って走ると、低回転からトルクフルな電気モーター駆動の効果によりスポーティなクルマという印象になる。

(菰田 潔)