<新・必殺改造人>
最高速日本一! 峰を極めた新彗星
RSヤマモト 山本豊史
日本一速いクルマを作る。それは、チューナーならば一度はみる夢だ。L型ターボを搭載したニューZで290.32km/hを記録し、あのRE雨宮を抜いたRSヤマモトの山本豊史は、わずか1年間の最高速挑戦で、栄光の座を把んだのである。果たして、その山本とはどんな男なのか?
目の前に1基分のエンジンパーツが並んでいる。
「これが、あのZのエンジンです」。指差されたブロックとヘッド、そしてバラバラになったワンセットのパーツ類が、日本最速のエンジンだというのだ。なんの変哲もなかった・・・。ニューZのCD値は約0.37。フロントとリヤにスポイラーを装着して多少軽減したとしても、0.35を切ることはなかろう。CD値=0.35のマシンが、290km/hを記録するために必要とするパワーを算出してみると、350ps前後という値がハジキ出される。後輪で実際に路面に伝えるパワー、つまり後輪軸出力=350psということは、エンジン単体なら400ps近くなければいけないはずだ。
この400psのエンジンを組んだチューナーは、わずか数ヵ月前までは、まったく無名だったRSヤマモトである。L型チューナーといえば、全国に無数にある。L型を使って日本最速にチャレンジするチューナーが、一流といわれるところだけでも10軒近くある。その有名チューナーの陰に隠れて、RSヤマモトは常に地味な存在でしかなかった。チューニングの世界だけは、スタンドプレイが許されないという。遅いクルマがある朝、突然速くなったり、1日にして超一流になったりすることはない。毎日毎日の地道な研究と作業が積み重なって、初めて一流の名前が与えられるはずだ。だが、最高速トライを始めて、約1年しかならないRSヤマモトが今、国産最速マシンを持つ、日本一のチューナーの座を奪取している。
ニューZにL型3L+HKSスーパーターボ・キャブ仕様のエンジンは、チャンピオン雨宮RX-7ツインターボの288.00km/hを破る、国産車初の290km/h台を叩き出したのだ。しかも、超一流チューナーが数年の期間と、数10回の最高速テストで一歩ずつ築いたこの記録を、RSヤマモトはまるで奇跡のようなハイペースで駆け上ったのである。まさに一夜にしてスーパースターになった、この「シンデレラ」的快挙は、いったいいかにして可能になったのだろうか。RSヤマモトのスタッフといえば、社長兼従業員兼メカニックの、山本豊史ただひとりなのである。290km/h、出るべくして出たと静かに語る男。新しいヒーローがどんな男なのか、興味は尽きない・・・。