clicccar編集長様が次は映画ボンド・カーと予告して下さいましたが、どうしてどうして、007エンシューとしては、しつこく原作小説「イアン・フレミング」ボンドにこだわります。
Bentley 4 ½ ブロワーが大破し、ロンドン近郊の何処かに埋葬されています。多分、ボンドの美学でしたら、遠くからそのシーンを見たのでしょうね。
ボンドの次のクルマもベントレーです。これは1953 Mk VI新車カブリオーレですが、試乗後、セールスマンに「かならず時間通り、カレーのフェリー・ターミナルに届けよ」なる指示を与えます。カラーは、やはりバトルシップグレイで、インテリアは青色革なる洒落た組み合わせ。このクルマは、どうも即手放したらしく、活躍はしていません。 ボンド、クルマに関しては、相当のわがままで、フツーすぎたのでしょう。
真正ジェイムズ・ボンドの本領発揮が3代目ベントレーで、1961年『サンダーボルト』事件に登場。すでにベントレーは、ロールス-ロイス傘下に入り、実質 R-Rの高性能版となっていました。ボンドは、どこかの金持ちアホーがグレートウエスト・ロード(ロンドンからヒースロー空港横を通り、イギリス西部に向かう幹線道路)で電信柱に巻きついたコンティネンタル・タイプR事故車を買い、ロールス-ロイスにフレームを修理させます。クーペボディを取っ払い、マリナーに2席、パワートップのオープンボディを特注します。レザーエッジ角ばったテールは醜いと表現する凄みを出したようです。カラーはバトルシップグレイですが、粗い塗装面。バケットシートは黒本革、内装は黒モロッコ革。「世界でもっともわがままなクルマ」で、当時の彼のガールフレンド全員合わせたより愛しますが、クルマを支配し、支配はされないと主張。チェルシーの瀟洒なアパート屋外駐車し、何時でも出動できる状態に保っています。
エンジンは、Mk IVの大排気量直6に積み替え、圧縮比を9.6:1に上げ、電磁クラッチ作動のアーノット・スーパーチャージャーを加えます。2インチ(5cm)排気管から生の轟音を響かせます。ロールス-ロイス社は、このハイチューンに対し保証を無効にしたといいます。
ちょっぴり、私のオタクぶり。この時代のロールス-ロイス直6は、“Fヘッド”、つまり吸入弁がOHV、排気弁がSVで、静粛性を誇っていたのです。当時の過給エンジンとしては高圧縮比ですが、もともとアーノットは羽根型スーパーチャージャーで、比較的低圧でしたから、充分耐えたのでしょうね。
コーチビルダーのH.J. マリナーは、1961年にロールス-ロイスに買収され、すでに傘下に入っていたパーク・ウオードと合併、H.J.マリナー・パーク・ウオードとなりました。私は、ロールス-ロイスの基幹車種がシルヴァー・シャドウとなった時期、ロンドン市ウールズデンの同社工場を取材しましたが、なんと創立者直系チャールズ・ウオードが出迎えてくれたのにビックリ。イギリスです。
(山口 京一)
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