車両の上方から俯瞰した車両の周囲360°の連続画像を鮮明に表示するには、4つのカメラから入力される輝度やコントラストの異なるデータを一連のデータに合成する能力が要求されます。
たとえば車両の右側から日射を受けている場合には、右側のカメラから入力されるイメージデータは明るくて、左側のカメラから入力されるイメージデータは車両の影で暗くなります。
このように、それぞれ輝度やコントラストなどの条件が異なる4つのカメラからのイメージデータを処理して一連の360°画像を形成するには4チャンネルのデータ処理能力が欠かせないというわけなのです。
そのために、新ICの4つの入力端子の後段には、4つのAFE(Analog Front End)が設けられており、各AFEの後段にはアナログ・ビデオ・デコーダーに相当するNTSC/PAL/SECAMが構成され、Y/C分離用4Hアダプティブ・コム・フィルターと、色相エラー補正のためのPALディレーラインを備えています。
さらに、4つの入力回路には自動コントラスト調整(ACA)回路を備えており、車両と日射の向きで各カメラの輝度やコントラストが変動しても、自動的に画像の最適化が可能になり、光量が少ない条件下や太陽光でまぶしい条件下の視認性と安全性を向上させることができます。
なお、新製品のIC1チップで最大9個のディスクリート部品を代替し、基板スペースを有効に利用できるようになっています。
今回発表された2種類のIC、ISL79985とISL79986の違いは、出力インターフェースにあります。
ISL79985にはMIPI-CSI2出力インターフェースを備えており、MIPI標準仮想チャネル識別機能を備えています。MIPI-CSI2は端子数が少ないため、先進運転支援システム(ADAS)向けアプリケーションプロセッサーに接続するのに好適です。
一方、ISL79986は、108MHz時分割多重ITU-R IT.656出力インターフェースを備えており、8ビット・データ・バス上での4チャネルの出力が必要な場合に最適です。
インターシルでは、今回の新ICは車両の周囲の対象物を検知するとともに、後進時と駐車時のドライバー支援のために、360度アラウンド・ビュー画像を生成する4チャネル・アナログ・デコーディング性能を発揮できるとしています。
ADASや自動運転向けに今後自動車にはアラウンドビュー・カメラ・システムが装備されることが増加すると予想されており、インターシルの新ICの動向に注目が集まっています。
(山内 博・画像:インターシル)