そうなると、ガソリンエンジンで最高レベルの熱効率と大差ないでは? などと、クルマがひと際重く感じる狭い山岳路でMIRAIのステアリングを握りながら考えていた次第。
テスラモーターズのイーロン・マスクCEOは、FCVについて否定的な発言をしていますが、FCVはある意味EVの一種ともいえますし、モーターならではの走りだけとってもEVとの違いを見いだすのは難しいでしょう。
テスラのモデルSなどは、速さも航続距離もEVの平均値を大きく上回っていて、確かに新しい高級車像、スポーツカー像を提案していますが、まだまだ高嶺の花。
また、FCVも日本では200万円もの補助金があっても誰もが買えるモデルとは言いがたく(もちろんインフラ整備も含めて)、こちらもまだまだ「自分が乗る(乗れる)」クルマとは言いがたいのが現状です。
また、アメリカのカリフォルニア州のZEV規制という課題もあり、ZEV対象車から外れたハイブリッド(HV)の代わりにFCVを売りたいという思いもトヨタやホンダにはあるかもしれません。
日本で余っている副生水素の活用(コスト面を考えるとFCV用としては容易に使えない)、FCVがその後の普及するに連れて国内では不足する可能性のある水素をどうやって確保するか、などの課題にも直面しそう。
しかし「MIRAI」も「CLARITY FUEL CELL」もFCVの先駆者(車)として一歩踏み出した意義は大きく、数々の課題をクリアして現在のハイブリッドカーのように普及する日がいつ来るか、そんなことを考えられるのが「MIRAI」も「CLARITY FUEL CELL」の存在価値といえるでしょう。
(文/塚田勝弘・写真/小林和久)