「コンパクトクロスオーバー」──スズキがそう称するイグニス。世界的に人気が高いクロスオーバーの利便性とそのスタイリングを小型車で実現したスズキの意欲作です。
ある意味、今までになかったジャンル、そこを新たにスズキが意欲的に開拓したとも言えるでしょう。しかし、そういった「今までにない」というのは正直言ってどこかアンバランスになりがち。
ところが、イグニスのハンドルを握り、アクセルを踏んだ感想はおよそ真逆。バランスのとれた非常に素直な走りが印象的でした。
さて、そんなイグニスの開発の狙いをチーフエンジニアは、(1)コンパクトなボディーに存在感があるデザイン、(2)マイルドハイブリッドによる、優れた燃費性能と力強い走り、(3)充実した安全装備と使い勝手の良い機能、だと話します。改めてイグニスをじっくりと見ていきましょう。
全長3700mm、全幅1660mmの車体は、あえて5ナンバー枠いっぱいを狙わないコンパクトなボディ。ですが、実車を目の当たりにすると、大きく張り出した前後のフェンダー、16インチの大径タイヤなど、イグニスのデザインには軽自動車にはない存在感とクロスオーバーらしい迫力を感じます。
そんなイグニスのデザインには、これまでに販売されてきたスズキ車のエッセンスが取り入れられているのも特徴。
フロントグリル内に配置されたヘッドランプは1977年に発売された初代セルボ。
フロントフェンダーに設けられたガーニッシュは、1988年に登場した初代エスクード。
また、Cピラーの造型は1971年に発売されたフロンテ・クーペというように伝統的なスズキデザインが取り入れられ、当時を知る人には懐かしく親しみのあるもの。それらをクロスオーバーらしい力強くて、しかも新しさを感じる魅力的なエクステリアデザインに仕立てられています。
またインテリアもシンプルな造型ながら、直線と円形が巧みに組み合わされ、横の広がりと近未来感が印象的です。インパネやドアトリムは下半面をホワイトに、センターコンソールやインサイドグリップにはオレンジやチタンカラーをボディカラーに合わせて採用するなど個性的に仕上げられました。
また、注目したいのがメーカーオプションのメモリーナビゲーションは“Apple CarPlay(アップル カープレイ)”に対応していることです。
これは、iPhoneと接続することで、ナビ(マップ)や電話、音楽、メッセージを車側のナビ画面で表示・操作できるもので、Siriによる音声コントロールも可能となります。使い慣れたiPhoneをシームレスに車内で楽しむことができます。
国内でシェアが高い、iPhoneユーザーに大きなアピールポイントになるのではないでしょうか。
そして自慢できるのがラゲッジルーム。ラゲッジ自体、通常で258リットル、リアシートを倒せば415リットルとこのクラスでは十分以上な容量を備えています。
にもかかわらず、その下に2WD車で106リットル、4WDで36リットルの隠された(?)サブトランクが現れるのです。容量が増えるだけでなく、高さのあるものを積む時にも役に立ちそう。また、ラゲッジ側から操作できるシートスライドで、容量の調節も可能です。とくに実用性を重視するユーザーにとって、このラゲッジルームは大きな魅力となるはずです。