軽クロスオーバーSUVの開拓車スズキ「ハスラー」、 東京モーターショー鮮烈お披露目あとの正式発表【今日は何の日?12月24日】

■軽クロスオーバーという新しい市場を開拓して大ヒットモデルに

2013(平成25)年12月24日、スズキが東京モーターショーで鮮烈なデビューを飾った新型車「ハスラー」を正式に発表、発売は翌年の1月8日から始まりました。ハスラーは、軽のクロスオーバーSUVとして、発売前から大きな注目を集め、大ヒットモデルとなりました。

2013年に発表されたハスラー。丸目のキュートなスタイリングが人気となったクロスオーバー
2013年に発表されたハスラー。丸目のキュートなスタイリングが人気となったクロスオーバー

●クロスオーバーSUVだが、デビューが早すぎたKei

軽のクロスオーバーSUVのパイオニアとして大ヒットしたハスラーですが、スズキはそれ以前に同様なコンセプトの「Kei」を発売していました。Keiは、1998年にデビューして、街並みもオフロードも似合う、まさに軽自動車のクロスオーバーSUVでした。

1998年にデビューしたKei、軽のクロスオーバー
1998年にデビューしたKei、軽のクロスオーバー

アルトより145mm高い全高のマッチョなボディに大径タイヤを履き、十分な最低地上高を確保。部品や機構の多くをアルトワークスから流用し、特に足回りはどんな走りにも耐えられるように設計されていました。

エンジンは、アルミ製660cc直3 SOHCのNA(無過給)とターボ、スポーツグレードにはDOHCターボを搭載。トランスミッションは、5速MTと3速&4速AT、駆動方式はFFと4WDが選べました。

Keiの登場は話題になりましたが、当時はまだSUVブームが盛り上がっておらず、大ヒットとはなりませんでした。

●東京モーターショーで衝撃的なデビューを飾ったハスラー

東京モーターショーでお披露目されたハスラーは、軽のクロスオーバーSUVとして大きな注目を集め、発売前から大人気となります。トヨタの「FJクルーザー」を彷彿させる、丸目のヘッドライトとキュートなボディカラー、キュートでちょっとレトロな雰囲気が魅力でした。

オレンジで統一された曲線基調のハスラーの運転席まわり
オレンジで統一された曲線基調のハスラーの運転席まわり

ベースとなったのは「ワゴンR」ですが、ワゴンRよりもルーフが長いため、ミニバンとSUVの両方の雰囲気を併せ持つ、まさしくクロスオーバーです。インテリアも、ボディカラーに対応して、オレンジと白の2色が用意され、エアコンの吹き出し口やメーターなども視覚的に楽しいデザインが採用されています。

パワートレインは、660cc直3 DOHCのNA(無過給)エンジンおよびターボエンジンの2種と、CVTおよび5MTの組み合わせ、駆動方式はFFと4WDを用意。また、スズキが展開している減速エネルギー回生システム“エネチャージ”と“アイドルストップ”が装備され、優れた燃費性能もアピールポイントでした。

軽のクロスオーバーというジャンルを開拓したハスラーは、ファミリー層だけでなく、若者からも支持され、長い納車待ちが発生する大ヒットモデルとなりました。

●軽のクロスオーバーSUV市場が盛況に

ハスラーの大ヒットを受けて、他社からも同様なコンセプトのクルマが追走しました。

2020年にデビューしたダイハツのタフト
2020年にデビューしたダイハツのタフト
2019年に登場した2代目ハスラー。基本的にはキープコンセプトで安全仕様を強化
2019年に登場した2代目ハスラー。基本的にはキープコンセプトで安全仕様を強化

ライバルのダイハツからは、2015年に「キャスト アクティバ」がデビュー。ハスラーよりもやや女性的なソフトな雰囲気のクロスオーバーSUVとして、人気を獲得。また、2019年には三菱からekシリーズの「ekクロス」がデビュー、ベースの「ekワゴン」よりも人気がありました。

5年後の2019年には、ハスラーがモデルチェンジして2代目が登場。ダイハツは、真っ向勝負を挑んだ「タフト」で対抗。

タフトも好調な販売で滑り出しましたが、現在の販売実績は、ハスラーが概ねタフトの1.5倍の販売を記録して、ハスラーの好調は現在も続いています。


長く続いているハイトワゴンブームとは別に、ハスラーの登場によって乗用車と同じように軽自動車でもクロスオーバーSUVブームが起こっています。多様化するライフスタイルとともに、軽でも居住性だけでなく、マルチユースなクルマが求められているのです。

毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれません。

Mr.ソラン

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Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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