とはいえ、こんなチャンスをもらって引き下がるわけにはいかない。記者としてこんなチャンスを与えられたからには、レポートしなければいけないという使命がある。失禁しないように、ちゃんとトイレに行ってから臨みましたよ。
しかも、私が乗ったバイクを運転するのは、往年の世界GPトップライダーです。アラフォーのバイクファンだったら感涙ものですよ! 往年の名ドライバーの背中につかまり、X2のリヤシートに乗ります。タンクのところにタンデムライダー用のグリップがついていて、そこを握るようになっています。そしてスタート!
スタート直後にウイリーしやがった! オレを後ろに乗せているというのに! ま、これは前のひとを見ていたからわかっていたのですが。でもね、ウイリーはそんなに怖くなかったな。で、そこから1コーナーまでは、あっというまに通過したんですが、1コーナーはまだフルスピードじゃなかったからね。そのあとだよ、問題は!
次のコーナーに向けてブレーキング。これが強烈すぎて、どうしてもお尻が浮いちゃうんです。リヤシートだからニーグリップできないのと、自分が運転しているわけじゃないから、ブレーキングのタイミングがわからないからかもしれません。どうしてもブレーキングではお尻が浮いちゃう。で、往年の名ドライバーは少し前荷重を残して寝かしこみに入っていくせいか、なかなかお尻が下ろせない。コーナー前半は身体が宙に浮いたまま、手と足だけで支えられている状態なんです。非常に落ち着かない。
そして気づくとバイクはフルバンク。そのへんでやっとお尻が下ろせます。さすがにタンデムなので往年の名ドライバーもハングオフはしません。リーンウィズで走るんですが、地面はもうすぐそこ! そしてそこからがすごい。Moto GPマシンのパワーでストレートへフル加速! フルパワーでしがみついていないと落っことされそうです。それはもう自分の背中が見えそうなくらいの猛烈な加速Gですよ。
でもね、必死は必死なんだけど、怖いかっていわれると、そんなに怖くなかったなぁ。というのは、ラインもバンク角もすべてレールできっちり決まっているかのような安定感があったからですね。グラッときたり、フワッとしたりすることがまったくない。ずーっとドシッとしてるんです。自分で運転するより、よっぽど怖くないかもしれない。最後はストッピーで減速して止まったんですが、それもあまり怖くはありませんでした。
それでも、下りたときには汗だくの膝はガクガク。もう放心状態ですよ。もう帰る体力が残っていないかと思ったくらい。
でもね。そのときは「もう勘弁……」って思ったんだけど、翌日になってみると「あんな体験はもう死ぬまで二度とできないんだな……」と寂しくなってしまうくらい感動的な思い出になりました。ちょっと今回は、フィリップ モリス ジャパンさんとドゥカティさんに、個人的にも感謝しました。
(まめ蔵)