最大熱効率44%、トヨタ・ディーゼルのポイントは「TSWIN」?

エンジンの熱効率を上げるというのは、燃料を燃やしたエネルギーの損失を減らし、できるだけ運動エネルギーとして利用することともいえます。

そして、トヨタのTSWINは冷却損失を大幅に低減することができる新テクノロジーなのです。

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ポイントは、ピストン頂部にほどこされたコーティングにあります。厚さ0.5mmというシリカ強化多孔質陽極酸化膜により、「熱しやすく冷めやすい」という特性を実現したといいます。

つまり、燃焼時にピストンから逃げる熱を減らし、また吸入行程ではすばやく放熱することで吸気密度を向上させることができるのです。かつて、各メーカーが研究したセラミックエンジンというのは、断熱特性を向上させることで熱効率を高めようというものでしたが、エンジン内の温度が上がったままになってしまうために吸気温度も高まってしまうという欠点があったといいます。

今回採用されたTSWINは、燃焼ガスの高膨張化と吸入空気の高密度化という相反する要素を両立できるのがポイントで、それによってピストン由来の冷却損失を30%の低減できたといいます。

ちなみに、ピストン頂部の表面温度はシリカ強化多孔質陽極酸化膜の採用によって、およそ150度ほど高くなった(摂氏200度から350度に上がっている)といいます。

また、このコーティングにおける最大のポイントは、素材ではなく構造です。ミクロンサイズの多孔構造にシリカでフタをすることで空気を封じ込め、「熱しやすく冷めやすい」特性を実現しているということです。

この記事の著者

山本晋也 近影

山本晋也

日産スカイラインGT-Rやホンダ・ドリームCB750FOURと同じ年に誕生。20世紀に自動車メディア界に飛び込み、2010年代後半からは自動車コラムニストとして活動しています。モビリティの未来に興味津々ですが、昔から「歴史は繰り返す」というように過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰的に見ることを意識しています。
個人ブログ『クルマのミライ NEWS』でも情報発信中。2019年に大型二輪免許を取得、リターンライダーとして二輪の魅力を再発見している日々です。
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